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ロックを新しいものにしたアークティック・モンキーズの衝撃

2017.05.01

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ビートルズやストーンズが黒人音楽から多大な影響を受け、ロックをポピュラーなものにしたように、ポップミュージックは今まであったものを時代に合うようにアップデートしていくことで発展していった。
そして現在、ビートルズやストーンズが作り上げたロックをさらに新しく更新したバンドがいる。イギリスのバンド、アークティック・モンキーズである。彼らは新しいロックンロールを鳴らし、時代のスターへとなっていった。

アークティック・モンキーズは2002年、同じ高校に通っているメンバーによって「Bang Bang」というバンド名で結成される。ヴォーカルのアレックス・ターナーとギターのジェイミー・クックがクリスマスにギターを買ったのがきっかけだった。
彼らはヒップホップを好むどこにでもいる高校生である一方、レッド・ツェッペリンやビートルズなどのオールドロックンロールにも深い興味を持っていた。それらの曲をアレックスの家のガレージでコピーするところからバンド活動は始まるのだった。

彼らがロックを始めた頃、90年代のブリット・ポップブームが終わったイギリスではロビー・ウィリアムスをはじめとしたポップシンガーが人気だった。世界的にR&Bやヒップホップが全盛の時代で、ロックンロールはマイナーなジャンルになりつつあった。
しかし同時に、アメリカのホワイト・ストライプスやストロークス、イギリスでもリバティーンズがデビューしていき「ロックンロール・リヴァイバル」というムーブメントが起こり始めていた。それらのバンドに影響されアレックスは、次第に自分でもオリジナルのロックンロールを作り始める。

ジェイミーの提案によって「北欧の猿」という意味のアークティック・モンキーズというにバンド名に改名した彼らは、オリジナル曲での活動を本格化させる。当時10代だった彼らだが、その名は各地のライヴハウスで知られ始めていった。

2005年1月、ファンによって音源がネットに公開されたことをきっかけに、イギリス中から注目を集める。そして同年10月「I Bet You Look Good On The Dancefloor」でデビューを果たした。アレックスが19歳の時である。

荒々しい演奏とアレックスの早口のシャウトが印象的なこの曲は全英チャートで1位を記録する。オールドロックンロールを参考にしながらも、ヒップホップに影響されたような歌い回しや、口ずさめるようなギターリフは今までにないものであった。彼らはいきなり全世界に衝撃を与えたのである。

その衝撃が冷めやらぬ中、翌年初めにはデビュー・アルバム『Whatever People Say I am, That`s What I`m not』をリリースする。タイトルからして挑発的なこのアルバムはバンドの持ち味であるパンキッシュな演奏と、アレックスのザラザラしたブルージーな声を味わえるような楽曲が多く収録されている。
デビュー・アルバムながら全英1位を獲得し、のちにローリング・ストーン誌でも「オールタイム・ベスト・デビュー・アルバム100」の30位に選出されるなど、このアルバムは高い評価を得た。
Arctic Monkeys『Whatever People Say I Am Thats What I Am Not』
Domino
20歳で高い名声を手にしたアークティック・モンキーズの勢いは止まることはなかった。前作から1年でセカンドアルバム『Favorite Worst Nightmare』をリリースしたのである。ギターリフが印象的な「Brianstorm」やアレックスの早口のような歌い回しが光る「Teddy Picker」など、より洗練された彼らの魅力が詰まったアルバムになった。
Arctic Monkeys『Favourite Worst Nightmare』
Domino
彼らはこのアルバムでも全英1位を獲得し、前作以上の成功を見せた。またこの年は、世界最大のフェスの一つであるグラストンベリー・フェスティバルで、初日のヘッドライナーとしてステージに立った。デビューから2年での抜擢は異例のことであった。
過去にはポール・マッカートニーやデヴィット・ボウイなど、イギリスを代表するようなロック・アーティストが立ったメインステージで、彼らは動じることなくライヴハウスのような熱量の高いステージを繰り広げたのである。
こうしてアークティック・モンキーズは世界中の少年少女を熱狂させながら、イギリスのロックを背負って立つアーティストへと成長していくのであった。

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