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ボブ・ディランの革新性に憧れ、ロックの魂を受け継いだラッパー、ポスト・マローン

2018.06.11

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エルヴィス・プレスリーの登場以降、あらゆる時代でロック・スターは若者たちを夢中にさせてきた。
ビートルズ、ジム・モリソン、セックス・ピストルズ、ニルヴァーナ、オアシス、グリーン・デイ、アークティック・モンキーズ。
彼らの荒々しく、反骨精神が滲み出た歌と演奏に、ティーンエイジャーたちは熱狂した。

そして今の若者たちの新たなスターになっているのが22歳のラッパー、ポスト・マローンだ。
長い髭と髪に、物憂げな声、そして力強さの中に切なさを感じさせる言葉は、かつてのロックスターたちを連想させる。
その風貌の通り、彼自身もロックに魅せられて音楽を志し、ロックスピリットを受け継いだ若者の一人だ。


ポストはニューヨークで生まれ、10歳の時にテキサスのダラスに引っ越す。
音楽好きの父親の影響で幼い頃からAC/DC、モトリー・クルー、ボン・ジョヴィなどのメタルやハードロックを聴き、自ら音楽を聴くことに楽しみを覚えていった。

彼が育った2000年代中盤は、エミネムやJAY-Zのようなラッパーの登場により、ヒップホップがポップミュージックにおいて市民権を獲得した時代だ。
アメリカのヒットチャートで、ロックバンドとラッパーがトップ争いをしている光景がしばしば見られるようになっていった。

ポストは、ロックバンドもヒップホップも、ジャンル隔てなく自分の好きな音楽を聴き漁る。
その中で彼が最も衝撃を受けた音楽は、15歳の時に聴いたボブ・ディランの「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」であるという。

「この曲は最初のラップ・ソングじゃないか!」

そう確信した彼は、ディランの革新性に憧れた。
いつしか、ディランがエレクトリックギターでフォークとロックの境界線をなくしたように、ポストはロックとヒップホップの境界線を無くすような楽曲を志向するようになった。

高校生の頃から音楽を作り始めたポストは、19歳になるとロサンゼルスに移り住み、音楽活動を本格化させる。
そして20歳のときに「White Iverson」を発表。



歌うようにラップをする姿と物憂げな声が評判を呼び一躍注目を浴び、その秋には名門リパブリック・レコードと契約。
次々とヒット曲を次々と送り出し、彼の名前はヒップホップ界に留まらずアメリカ中に知れ渡るようになった。


新鋭のラッパーとして注目されたポストだが、ライヴでは今までのラッパー像とは異なる姿を見せつけた。
ハンドマイクでラップをするだけでなく、アコースティックギターを持ちボブ・ディランやニルヴァーナ、グリーン・デイらの名曲を弾き語ったのだ。



ロックも自分の音楽のルーツである―そんな姿勢の表れであり、今までにないスタイルとスピリットを持ったラッパーとしてロックファンをも虜にした。

そして、2017年にはそんなロックへのリスペクトが詰まった楽曲、「ロック・スター」を発表する。
不穏で冷たいビートの上で歌われるのは、「自分も往年のロックスターたちのような新たな伝説になる」という宣言だった。



クルマを乗り換え バック・イン・ブラック
こう言ってやる「安らかに眠れボン・スコット」
ドアは閉めろ 煙が逃げる
君はモリソンのように火をつけて欲しいんだろ
ステージでおちゃらけ きっと警官たちも話題にする
ほら 伝説さ

ロックスター… ロックを感じろ


「ロック・スター」は、彼が憧れたスターたちの名前や曲を引用しながら、その荒々しさと反骨の魂をヒップホップに取り込んだ楽曲になった。

この楽曲は多くの若者を熱狂させ、2017年から2018年にかけてビルボード・チャートの1位に居座り続けた。

楽曲の興奮が冷めやらぬ間に、アルバム『ビアボングズ &ベントレーズ』をリリースする。

彼のラップとトラックが光る曲があると思えば、ギターを弾きながら物憂げで熱のある歌を響かせる曲もある。
まさに、彼が目指していた音楽の集大成だ。



ポスト・マローンはヒップホップのロックの境界を壊し、文字通り新たな「ロックスター」になったのである。

(文・吉田ボブ)


Post Malone『Beerbongs & Bentleys』
Universal

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