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カール・パーキンス〜男の美学が生んだ名曲

2024.01.18

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ジョニー・キャッシュとカール・パーキンスは、ともに55年にサン・レコードからデビューする。キャッシュがすぐに「Cry Cry Cry」のヒットを出したのに対して、パーキンスは当初ヒットに恵まれなかった。舞台ではエルヴィスより受けるときもあったパーキンスをキャッシュが褒め称えると、彼はこぼした。

「でも、あいつにはヒット・レコードがあって、俺にはないんだ」

そこで、ある晩にキャッシュは親友にヒットしそうな曲のアイデアを差し出す。
「青いスエードの靴についての曲はどうだい?」

パーキンスはメンフィスやジャクソンの店でそういった靴を見たことはあったが、靴の歌なんて愚かしいと思った。すると、キャッシュは空軍でドイツに駐屯していたときの話を始めた。

「仲の良いC・V・ホワイトという黒人の航空兵がいた。おしゃれな奴でね。外出許可の出た日には上から下までばっちりと決めるんだ。ある時に俺が褒めたら、“俺の青いスエードの靴を踏むんじゃないぜ”と言うんだ。それは軍人用の黒い靴なのに。いや、今晩だけはこれは青いスエードだ。だから踏むんじゃないぞ“ってね」

キャッシュはその話から曲を作れると思ったのだが、残念ながらパーキンスはピンとこなかった。

数週間後、パーキンスは着飾った学生でいっぱいのクラブで演奏していた。場内は大盛り上がり。そんなとき、楽しそうに踊っていた美男美女のカップルの男が声を上げた。

「おい、俺の靴を踏むなよ」
「ごめん」と相手の女が謝る。

パーキンスが足元を見ると、彼が履いていたのはまさに青いスエードの靴だった。演奏を続けながら、彼らの様子を窺っていると、その男は靴を踏まれたことをずっと気にしているようだった。「可愛い女の子と踊りながら、こいつは靴の方が気になるのか!」

その晩にカール・パーキンスは彼を一躍スターにする曲を書く。「Blue Suede Shoes」である。

俺の家を燃やそうが
俺の車を盗もうが
俺の酒を飲もうが
何をしてもかまわない
でもハニー 俺のブルー・スエード・シューズを踏まないでくれ
お前が何をしたっていいけれど
俺のブルー・スエード・シューズだけは踏まないでくれ




キャッシュは空軍でドイツに駐屯していたとき
ジョニー・キャッシュは1951~54年までドイツのランツベルグ空軍基地に駐屯したが、初めて自分のギターを買ったのは、このドイツ時代のこと。20マルクでブランド名もないような安物ギターを買ったのだ。彼は兵士仲間3人と初めてのバンド、ランツベル・バーバリアンズを結成し、自作曲を書き始める。「Folsom Prison Blues」などはドイツ時代に書いた曲だ。

カール・パーキンス『Original Sun Greatest Hits』


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