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リアム・オ・メンリィ〜本能のままに

2014.03.08

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リアム・オ・メンリィは、ホットハウス・フラワーズのリード・シンガー。
本能のままに生きる人、そして音のケダモノ、音獣。

初めて彼らの音楽を聴いたのは、90年代の始め。居候中のNY、イーストビレッジのビルの屋上だった。ラジオから流れてきた音楽に乗っかって、僕も宇宙に飛んでいけそうだった。この男とはいつか会うことになるだろう、と理由もなく思ったが、実現するのには2年もかからなかった。世界は意外に狭かった。

以来、彼とは何度も演奏してきたが、彼は本能にもっとも近い場所から音を奏でることができる希有な存在だ。ミュージシャンに必ずある醜い欲やエゴが存在しない。もともと彼らを見いだしたのはU2のボノ。彼らも本国ではスタジアムでコンサートを行っていたこともある。けれど、そんなことはリアムにとってはどうでもいいことなのだと思う。

いつだって彼は物事の本質を見ようとする。それゆえ、仙人になってしまったかのような誤解も受けるのだが、そんなことはない。ライヴで自分の目で確かめて欲しい。彼が音のケダモノ、音獣であることは何も変わってはいない。最新作があまりに即興性にとんでいたので、僕は彼にどうやって録音したのか尋ねてみた。

うーん、スタジオで録音の赤いランプがついたら、僕は無になって何も考えないんだ。何かが降りてくるのを待つんだ。降りてきたときには歌詞もメロディーも何もかもその場で出来てるんだよ。


2011年、震災のあと。名だたるアイリッシュのミュージシャンたちがダブリンに集結して、僕らの国のためにコンサートを行ってくれた。ネットで中継を観ていて、僕は胸が熱くなった。ザッツ・アイルランド人。一言もそんなことを云わなかったけれど、このコンサートの実現のために一番骨を折っていたのが彼だった。そんな役目、もっとも向いていないはずなのに。彼がアイリッシュであることの意味を問われるなら、素晴らしいトラッドを演奏することよりも、この事実を僕は伝えたい。

2011年の終わり。「どうしても被災地に行きたい」と云う彼を、僕は福島県相馬市に連れていった。跡形もなくなった海辺の町を自分の目で心に刻んだあと、大勢の街の子供たち前で、彼は魂の底から音楽を奏でた。

僕は震えた。子供たちはマサイ族のように飛びはねながら、音楽に反応した。ほんとうに、何というか、美しい眺めだった。僕はあの光景を忘れない。

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ホットハウス・フラワーズ『People』(1988)

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