1978年、セックス・ピストルズを脱退したジョン・ライドンは、レゲエの本場ジャマイカで3週間の休暇を過ごした。
その後、レゲエ好きの友人ジャー・ウォブル(ベース)と、キース・レヴィン(元ザ・クラッシュのギタリスト)に声を掛けて新バンドパブリック・イメージ・リミテッド(Public Image Ltd)を結成した。当時のドラマーのジム・ウォーカーはオーディションによって雇われた。
1978年12月、1tsアルバム『Public Image』をヴァージンから発表。話題性はあったものの、レコードセールスは芳しくなかった。
翌1979年11月には、数人のドラマーが参加した2ndアルバム『Metal Box』を発表。このアルバムはヒットチャートの上位にランクインし、音楽的なユニークさからも彼らの代表作と位置づけられる作品となる。
しかし、発表直後にベースのウォブルが意見の相違のためバンドを脱退。2ndから参加していたドラマー、マーティン・アトキンスも一旦解雇となる。メンバーはマーティンを何とか呼び戻し、新しいベーシストを迎えることなく『Flowers Of Romance』(1981年)を発表。
その後、約2年のブランクを挟み、ジョン・ライドンとキース・レヴィンは新作アルバム『Commercial Zone』の制作にとりかかる。それはジョン・ライドンが27歳を迎えた1983年のことだった。
「当時レコード会社(ヴァージン)は何とか俺にヒットシングルを書かせようって圧力をかけてきたんだ。“いいだろ?ジョニー、僕らのために一曲くらい素敵なラブソングを書いてくれたっていいじゃないか?そうすればお互いたんまり金儲けできるんだから”俺はハッキリ言ってやったよ。“お前ら、俺がこれまで散々やってきたことを見てきといて、誰に向かって何をしゃべってるんだか、わかってるのか?!”ってね。」
そう言いながらも、ジョンには極上のポップソンングを書く自信もあったという。しかし、“誰かに頼まれて”“レコード会社に指示されて”そういう曲を書くことだけは絶対にしたくなかった。曲を書く時はあくまで直感的に、そして自然発生的に書くというポリシーを持っていたからだ。
「書きたいから書くだけ!俺のプロセスに干渉してこようとしたって無駄だ!俺は自分に与えられた才能を軽んじるつもりはない。安っぽいラブソングなんか書いて、小銭を稼いで、金を無駄遣いする気もないね。」
こんなやりとりの中からアルバム『Commercial Zone』に収録された「(This is Not a) Love Song」のアイディアが生まれたという。
「当時、キースの野郎は俺を下手クソなシンガーだと決めつけていたが、それを面と向かって言ってくることはなかった。あいつはスタジオに一人でこもってあれこれ小細工をしやがった。あいつは俺に噛みつかれるのを避けていたんだ。」
アルバムは完成したものの、リリース前にバンドの要とも言えるキース・レヴィンが脱退してしまう。
「俺達は音楽的方向性なんてことに関して話し合ったことは一度もなかった。俺とこれまで仕事をした連中に訊けばわかるさ。俺には予定表も設計図もいらない。キースが何を求めていたのか?俺にもわからない。だが奴はPiLを自分のバンドだと思い込んでやがった。俺には奴の“勘違い”を指摘する必要があったんだ。俺達の関係に終止符を打たせた原因はひとつだけじゃない。数えきれないくらい色んなことがあったんだ。俺は今も奴と袂を分かったことに対して何の罪悪感も持ってない。あの時はまるでスイッチがカチっと切り替わったみたいな感覚だった」
キースの脱退劇を乗り越えて、バンドはアメリカツアーをこなしていた。そんな中、ジョンに日本公演の話が舞い込んでくる。
「メンバーは日本に行けることをとても喜んだよ。俺達はツアーのセットリストに“アナーキー・イン・ザ・UK”を加えて日本に乗り込んだ。日本のファンの盛り上がりはファンタスティックだったよ!日本公演のライブアバムをリリースすることになったのは、ヴァージンからからのプレッシャーがあったんだ。そうすることでビジネスも回り続けることだし、レコード会社も俺達に対して誠意を尽くすだろう。俺だって何でもかんでも逆らう気はないんだぜ!自分が決して一緒に仕事をやりやすい人間じゃないことは俺自身が一番わかってるんだけどな(笑)」
この日本公演のライブアルバムは、PiLのライブバンドとしての評判を確立させるきっかけとなり、彼らは1983年以降のツアーを順調に成功させていった。
<引用元・参考文献『ジョン・ライドン 新自伝 怒りはエナジー』ジョン・ライドン (著), 田村亜紀 (翻訳)/シンコーミュージック>
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執筆者
【佐々木モトアキ プロフィール】
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