ジェイムズ・テイラー、エルトン・ジョン、キャロル・キング、ギルバート・オサリバン、ビリー・ジョエル、ジョン・デンバー…そしてブルース・スプリングスティーン。
彼らは皆、1970年代のミュージックシーンにおいてその才能を開花させた“シンガーソングライター”である。
1970年代…それはミュージシャンとリスナーの年齢の幅がどんどん広がりつつあった時代。
ミュージシャン達は30歳を超えても引退しようとせずに、自分の年齢に見合う音楽を作るようになった。
1950年代にエルヴィスを、1960年代にはビートルスやボブ・ディランを聴いて育ってきた若者達は大人になってもロックを聴き続けたのだ。
いつのまにか“Don’t trust anyone over 30(三十歳以上の奴は信じるな)”という言葉は忘れ去られていった…。
ロックはティーンエイジャー達の“反抗の音楽”から、大人向けの洗練された娯楽までを広くカヴァーする音楽となりつつあった。
それまでの音楽業界はレコード会社を中心に「プロの作詞家・作曲家が曲を作り」→「プロの編曲家が音作りを担当し」→「プロデューサーの仕切りの下で歌手が歌う」という図式があった。
だが1960年代の中頃からは、ボブ・ディランやサイモン&ガーファンクルをはじめ、多くのアーティスト達が自作曲を歌うことによって、より直接的に“想いを伝える”という手段を手に入れたのだ。
歌手は美声でなくてはならないという、それまでの常識は葬り去られ…より説得力のある歌詞、過剰に飾らないアコースティックをベースにしたサウンド作りなど、これまでになかった魅力を備えたアーティストと楽曲が多数誕生したのは70年代だったのだ。
ヴェトナム戦争を背景に平和や反戦を訴える楽曲は陰を潜め、アーティスト自身の実体験や人生経験を下敷きにした楽曲が好まれるようになったのだ。
70年代の初頭にジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、ジム・モリスンという稀代のロックスター達が次々と(奇しくも皆27歳の若さで)この世を去り、それまでの時代を席巻していたサイケデリックムーブメントの魔力は完全に失われることとなった。
70年代、それはロックやポップスがより身近な言葉や高い作曲能力によって新たな輝きを放ち始めた時代だった。
ジャズ、ブルース、カントリーミュージック、ロックンロール、R&B…脈々と続くミュージックシーンにおいて、ある意味最も音楽的に洗練された“豊作の時代”だったのかもしれない。
<参考文献『新版ロックスーパースターの軌跡』北中正和(音楽出版社)>
<参考文献『世界のポピュラー音楽史』山室紘一(ヤマハミュージックメディア)>
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