「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信

TAP the POP

TAP the ROOTS

あなたがここにいてほしい

2025.12.22

Pocket
LINEで送る

『Atom Heart Mother』に『原子心母』にという邦題をつけ、『The Dark Side of the Moon』には『狂気』というタイトルをつけた日本のレコード会社は、1975年に発表されたピンクフロイドの『Wish You Were Here』に『炎』というタイトルをつけた。

だが、バンドは、わかりやすいサブタイトルをつけるように、という注文をつけてきたという。

確かに、それまでの邦題はイメージ先行の感が強すぎた。『Atom Heart Mother』は原子力の心臓ペースメーカーを埋め込んだ母親のことで、『The Dark Side of the Moon』は月の暗い側、といった意味だ。


『Wish You Were Here』のジャケットに描かれていたのは、二人のビジネスマンが握手をしている様子。そしてひとりのビジネスマンは炎で包まれている。今回はイメージ先行というよりは、見たまま、だったのだ。

そこでバンドのメンバーは知り合いの日本人に訳を頼み、『あなたがここにいてほしい』というタイトル案を日本サイドに提案してきたのである。

タイトル曲となった「Wish You Were Here」は、結成メンバーの一人であり、薬物が原因でバンドを脱退することになったシド・バレットについて、ロジャー・ウォータースが書いた詩がモチーフになった。

天才と謳われたシド・バレットは、特殊な体質の持ち主だった。彼には【共感覚(シナスタジア=synesthesia)】があったのである。共感覚の持ち主は、五感の一つが働く時、別の感覚を同時に感じることができると言われている。つまり、文字に音を感じたり、音に色を感じるのである。

アルバム・ジャケットの握手するビジネスマンは、もう一人のビジネスマンが悪意、もしくは怒りの炎を隠していることに気づかない。おそらく、シドなら、わかるだろうに、というわけだ。

だから、『あなたがここにいてほしい』なのである。もっとも、シドは、その特異な才能に押し潰されてしまったのだけれど。。。

 そう、あなたには区別がつくわけだ
 天国と地獄
 青空と痛み
 あなたには区別がつくのかい
 緑の草原と冷たい鋼のレール
 区別がつくと思うかい

 あなたはトレードを迫られたわけだ
 英雄と幽霊を
 熱き灰と木を
 熱気とそよ風を
 あなたは交換を迫られたのかい
 戦地での端役と
 檻の中での主役の座を

 あなたが、あなたがここにいてほしい
 ふたりは
 来る年も来る年も
 金魚鉢で泳ぐ彷徨える魂だった
 同じ場所を駆けずり回っては
 同じ恐怖に出会ったものじゃないか
 あなたがここにいてほしい



ピンク・フロイド『炎〜あなたがここにいてほしい』
ワーナーミュージック・ジャパン


炎~あなたがここにいてほしい – 50周年記念盤ジャパン・エディション (2CD+BD 7インチ紙ジャケット仕様) (完全生産限定盤)

    TAPthePOPアンソロジー『音楽愛 ONGAKU LOVE』

    TAP the POPが初書籍を出版しました!

    「真の音楽」だけが持つ“繋がり”や“物語”とは? 
    この一冊があれば、きっと誰かに話したくなる

    今までに配信された約4,000本のコラムから、140本を厳選したアンソロジー。462ページ。

    「音楽のチカラで前進したい」「大切な人に共有したい」「あの頃の自分を取り戻したい」「音楽をもっと探究、学びたい」……音楽を愛する人のための心の一冊となるべく、この本を作りました。

    ▼Amazonで絶賛発売中!!
    『音楽愛 ONGAKU LOVE』の詳細・購入はこちらから

Pocket
LINEで送る

あなたにおすすめ

関連するコラム

[TAP the ROOTS]の最新コラム

SNSでも配信中

Pagetop ↑

トップページへ