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エド・シーランとヴァン・モリソンが求めた故郷の音楽

2018.02.13

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今もっとも世界から注目を集めているであろうイギリスのシンガー・ソングライター、エド・シーラン。
2017年には3rdアルバム『÷(ディバイド)』をリリースし、日本を含めた世界各国でSpotifayの年間再生数トップを記録した。



ロックやフォーク、ヒップホップなど様々なジャンルのエッセンスが散りばめられたエドの音楽だが、そのルーツについてエリック・クラプトンやエルトン・ジョン、ジョニ・ミッチェル、エミネムなど、様々なジャンルのミュージシャンの名を挙げている。

そんなエド・シーランが『÷(ディバイド)』で新たに挑戦したのが、アイルランドの音楽だ。
アルバムに収録されている「ゴールウェイ・ガール」では、アイルランドのバンド、ビオーガを招いてレコーディングしている。
この曲をアルバムに入れることについて、レーベルからは「民族音楽なんてどう考えてもクールじゃない」として猛烈な反対をされたという。
それでもエドは断固として譲らず、アルバムに収録されることになったのである。


彼女はフィドルを弾いていた
とあるアイルランドのバンドで
ところが恋に落ちてしまった
相手はイギリス人の男


歌の中では2人の馴れ初めが綴られていくのだが、そこにはアイルランド人の気質や生活、文化が描かれている。


ジュークボックスでヴァン・ザ・マンをかけると
立ち上がって踊り出したんだ




“ヴァン・ザ・マン”とはエドが敬愛するアイルランド出身のミュージシャン、ヴァン・モリソンの通称だ。

父親がアイルランド系のハーフで、自身もクォーターであるエド・シーランの家庭では、ヴァン・モリソンのレコードをはじめ、アイルランド出身のミュージシャンやケルト音楽が流れていた。
中でも幼少時代のエドに大きな影響を与えたとされているのが、ヴァン・モリソンがアイルランドの国宝と称されるバンド、チーフタンズとともに制作した1988年のアルバム『アイリッシュ・ハートビート』だ。



チーフタンズのリーダー、パディ・モローニはアルバムを一緒に作ったときのヴァンの心境について、「アイリッシュとしてのルーツを探していたんだと思う」と話している。
1964年にロックバンド、ゼムのメンバーとしてデビューしたヴァンは、脱退してソロになったあとはロックやソウルだけでなく、フォーク、ジャズなど様々なジャンルを取り入れてきた。
その中には故郷の伝統音楽であるケルト音楽も含まれているのだが、『アイリッシュ・ハートビート』ではケルト音楽に真正面から挑んでいる。



ヴァン・モリソンが求めた故郷の音楽は『アイリッシュ・ハートビート』という名盤を生み出した。
そしてそれを聴いて育ったエド・シーランにとっても、ケルト音楽は故郷の音楽となったのである。


エド・シーラン『÷(ディバイド) 』
ワーナーミュージック・ジャパン

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