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ギターに全く興味のなかったトム・ヴァーレインとストーンズの「19回目の神経衰弱」

2019.04.02

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1973年、パンク・ムーヴメントが注目を集めるニューヨークで結成されたバンド、テレヴィジョン。
しかし、その音楽をパンクと呼ぶにはあまりにメロディックかつ複雑であり、彼らはシーンの中でも異彩を放っていた。
バンドのギター・ボーカルで、ソングライティングを手がけるトム・ヴァーレインもまた「僕たちは間違いなくパンクではない」と否定している。

1976年にリリースされたデビュー・アルバム『マーキー・ムーン』では、ロックだけでなくジャズやレゲエ、トムが好きなラヴェルといったクラシックなど、様々なジャンルからの影響が伺える。



トムの音楽のルーツは多岐に渡っているが、ことギターを弾きはじめたきっかけに関していえば、明確にひとつの楽曲を挙げている。
それがローリング・ストーンズの「19回目の神経衰弱」だ。

1949年にニュージャージー州で生まれたトム・ヴァーレインは、幼い頃からピアノを習うなど、音楽に対する好奇心の旺盛な少年だった。

そして中学生になると、あるひとつの楽器に心を奪われることとなる。
その楽器とはギター、ではなくサックスだった。
白人ジャズ・プレーヤー、スタン・ゲッツの音楽を聞いたトムは、その音にすっかり魅了されたのである。
サックスの練習をはじめたトムは、いつか自分もジャズの世界で活躍することを夢見るのだった。

1964年にビートルズ旋風がアメリカでも吹き荒れ、ロックが若者の新たな音楽として大流行しても、トムの興味がうつることはなかった。
彼が夢中になっていたのはエリック・ドルフィーといったサックス・プレーヤーや、アルバート・アイラー、チャールズ・ミンガスといった前衛的なジャズマンたちだった。

「60年代前半、ぼくはジャズを聴いていたんだけど、ラジオからギターの音が聞こえてきたら、文字通りオフにしていたよ」

今でこそロック史に名を残すギタリストの一人であるトム・ヴァーレインだが、この頃には耳にしただけでラジオを消すほどに、ギターの音に魅力を感じていなかったのである。
そんなトムの価値観を変えたのがローリング・ストーンズだった。

「はじめてギターを弾きたいと思わせてくれた曲が『19回目の神経衰弱』だったんだ」


この楽曲は「サティスファクション」や「一人ぼっちの世界」を大ヒットさせ、人気を不動のものにしつつあったストーンズが1966年にリリースした楽曲だ。

ジャズ・ドラマーだったチャーリー・ワッツの刻む4ビートのリズムが、ジャズを愛聴していたトムにとってとっつきやすかったのもあるだろう。
しかしそれ以上にトムの心を掴んだのが、ブライアン・ジョーンズとキース・リチャーズの2人が織りなす2本のギターの音だった。
キースの刻む硬質なサウンドのリズム・ギターと、ブライアンが弾くリフが勢いよく展開し、互いの存在を引き立てあうこの楽曲と出会ったことで、トムはロックを聴きはじめ、そしてギターを弾きはじめたのである。



そうなると気になるのが、トムはキースとブライアンのどちらのギターに、より惹かれたのかということである。

そんなことを考えながら、2本のギターによるアンサンブルが展開する『マーキー・ムーン』の楽曲に耳を傾けてみるのも面白いかもしれない。


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