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CASE OF BOØWY〜限界点を超えた伝説の全曲演奏GIG

2023.07.28

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1987年の夏、人気絶頂だったBOØWYが神戸と横浜で2夜限り特別公演を行なった。
CASE OF BOØWYと名打たれたそのステージでは当時のバンドの持ち曲すべてが演奏され、後に“伝説のGIG”としてファンたちの記憶に刻まれることとなった。
30年後…横浜公演が行なわれた同日にあたる8月7日に、その2夜それぞれの完全セットリストを新たにトラックダウンしてコンプリート収録した音源がリリースされた。
完全限定盤スペシャルボックスには、全78曲(39曲×2)がCD4枚に収録されている。
【ユニバーサルミュージック・ストアー】
http://store.universal-music.co.jp/artist/boowy/


BOØWYというバンド。
彼らが全身全霊をかけて臨んだ2公演は、なぜ30年経った今でも多くのファンたちの心をときめかせるのだろう?
当時の資料や取材記事を辿りながら、その伝説の実態に迫る!



7月31日、神戸ワールド記念ホール。
8月7日、横浜文化体育館。
CASE OF BOØWYは“二つの表情”を持っていたという。
2夜同じセットリストの39曲。
あいだに一度休憩を入れた二部構成になっていた。
同じメニューとはいえ、神戸と横浜はまったく別の印象を残したステージだったという。
メンバーとファンが互いに全力でパワーをぶつけ合いながら大きなうねりを作ったのが初日の神戸だった。
一方、横浜ではバンドが客席の空気を探ることなく、圧巻のビート感でオーディエンスを引っぱり続けたステージとなった。


神戸のステージではメンバーが限界に挑もうとする姿が印象的だったという。
後半のラストスパートにあたる3〜4曲で、ギタリストの布袋は大量の汗で右手からピックをすべり落としていた。
氷室の声も繰り返されるシャウトによってピークのギリギリまで達していた。
最後のアンコールでは、あの鉄壁のリズムを叩き出す高橋のステックが一瞬乱れかかったかのようなシーンもあった。
そしてBOØWYのビートの要とも言われる松井の右腕も、時折硬直したかのように肩でピックを刻むシーンもみられた。

「We Are BOØWY!!!」


振り絞った声で氷室が最後に叫び…熱狂の一夜は幕を降ろした。
ステージから降りたメンバーは、しばらくの間その場でひっくり返っていたという。
すべてを出し切り、まさに限界点を超えた男達の姿がそこにあった。


横浜のステージのリハーサルを終えて楽屋で準備をしていたドラムの高橋に、取材記者がこんな質問をした。

「神戸と比べると今日は2回目ということで、ペース配分がわかる分だけ楽ですね。」


高橋は首を振りながらこう答えた。

「いや〜楽じゃないよ。また終わったらひっくり返ってるのがわかるね(笑)10回くらいやればペース配分もわかるだろうけど…そんなことやったら、それまでに死んでるね(笑)」


本番を知らせるベルが鳴り、ステージライトの中に飛び込んでいった氷室が最初のMCでファンを煽る。

「ハロー!!!久しぶりの横浜だぜ!今日はいつものライブと違ってCASE OF BOØWYだぜ!OK!息が続くまでがんばろうぜ!」


それは気合いを入れるというよりも、バンドとしての大きな自信を表す言葉だった。
事実、その日は一部二部を通じてバンドは一瞬たりともペースダウンことはなかった。オーディエンスは、いつもよりもスピード感を増した彼らのビートに引っ張られながら身体を揺らし声を上げ続けた。

終演後…取材記者は客席で汗だくになっていた十代の少年に感想を訊いた。
少年は息を切らしながら一言だけこうつぶやいたという。

「すごい…。」


後に伝説となった2夜…それは少年の一言がすべてをあらわしていたのかもしれない。



【BOØWY GIGS-CASE OF BOØWY 4HOURS】

<一部>
01.INTRODUCTION
02.IMAGE DOWN
03.BABY ACTION
04.RATS
05.MORAL
06.GIVE IT TO ME
07.16
08.THIS MOMENT
09.わがままジュリエット
10.BAD FEELING
11.LIKE A CHILD
12.OH! MY JULLY PartI
13.WORKING MAN
14.B・BLUE
15.TEENAGE EMOTION
16.LONDON GAME
17.NO.NEW YORK


<二部>
18.DANCING IN THE PLEASURE LAND
19.ROUGE OF GRAY
20.RUNAWAY TRAIN
21.B・E・L・I・E・V・E
22.CLOUDY HEART
23.INSTANT LOVE
24.FUNNY-BOY
25.MY HONEY
26.LET’S THINK
27.1994 -LABEL OF COMPLEX-
28.PLASTIC BOMB
29.MARIONETTE
30.RENDEZ-VOUS
31.SUPER-CALIFRAGILISTIC-EXPIARI-DOCIOUS
32.ハイウェイに乗る前に
33.JUSTY
34.ホンキー・トンキー・クレイジー
35.DREAMIN’

<アンコール>
36.BEAT SWEET
37.BLUE VACATION
38.ONLY YOU
39.ON MY BEAT


<引用元・参考文献『B-PASS SPECIAL EDITION BOOWY 1986-1988』シンコーミュージック>






【佐々木モトアキ プロフィール】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12648985123.html

【TAP the POP佐々木モトアキ執筆記事】
http://www.tapthepop.net/author/sasaki

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