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季節が君だけを変える〜BOØWY時代の氷室京介が受け入れた“最初で最後”の歌詞変更と、解散を意識したレコーディング舞台裏のドラマ

2017.10.07

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80年代に一世を風靡したロックバンドBOØWYの7枚目のシングル曲である。
解散宣言前にリリースされた最後のシングルであり、BOØWYとして事実上最後のシングルとなった作品だ。
クレジットには1987年10月26日リリース、作詞:氷室京介、作曲・編曲:布袋寅泰と記されている。
アルバム『PSYCHOPATH』(1987年)からのシングルカット曲で、発売前のインタビューではシングルカットの意向が無いという布袋の発言があったが、実際には布袋によって最終シングルになる事が決定していたという“曰く付き”の楽曲だった。
具体的に解散という発言はなかったものの…メンバーと主要スタッフ間では“これが最後のアルバムになる”という暗黙の意識でレコーディングに臨んだという。
特に布袋は最後のアルバムという意志が強かったらしく、最後のシングル曲となる「季節が君だけを変える」の歌詞に対して、初めて氷室に書き直しを依頼した。

もっと深い、俺達の関係を言葉にして欲しい。


それまで一度たりとも(他の意見による)歌詞の手直しをしたことがなかった氷室も、布袋の想いを感じとったのか“別れ”をテーマに歌詞を書き直したという。
それはBOØWYの歴史上において“最初で最後”の歌詞変更だった。
レコーディングは滞りなく行われ…すべてを録り終えたと思われた。
だが、その歌詞変更に対して氷室が最後に一つだけ条件を出していたのだ。

カップリング曲を「CLOUDY HEART」にして欲しい。


その曲は、1985年にバンド名をタイトルし掲げて発表したアルバム『BOØWY』に収録された、氷室にとって強い思い入れのあるものだった。
歌詞の内容は、氷室が上京時に交際していた彼女との別れを歌ったものだった。
その曲をリアレンジしてラストシングルと共に収録する。
それは、解散発表後のライブレコーディングを除いてBOØWYとして“最後のレコーディング”となった。
当時の担当ディレクター、子安次郎はこう振り返る。

「シングルのA面、B面という捉え方をするのならば、僕の中ではBOØWYの本当の最後の曲はCLOUDY HEARTだという気持ちが強いですね。」


リリースから2ヶ月後の1987年12月24日、クリスマスイブに行われた渋谷公会堂のステージ上でBOØWYは解散を宣言する。

「アルバムを作る度に(布袋と話す時に)言葉でいうヴィジョン的なものは出てくるけど、出来上がった音っていうのは必ずしもその言葉通りにはならないよ、いつも。バンドって大方そうだと思うけれど。でもその言葉よりも、やりたいことにうまく近かったりとかね。そういうところもあるからオモシロイよね。ヴィジョン通りいかなくってヤダなと思ったことの方が多いから続いてんじゃないかな。ワンマンバンドって、あるじゃない?結構たくさんあるけれど…。そうなっちゃうと何か言わなかった言葉とか、自分の思ってた音楽志向みたいなものとの、ちょっとのズレがでかくなってくるかもしれないね。BOØWYはみんな好き勝手やってるから。オレは一応リーダーっていうことになってるけど、別にその見解をまとめるとかさ、決定権を完璧に持ってるとか、そういうリーダーじゃない。みんなの大体の話をまとめてくとか、その程度のもんだし。」
(1987年:氷室京介)


当時“解散”という事実をメンバーから突きつけられたのは数人の主要スタッフのみだった。
しかし、当然のことながら、その頃のBOØWYのスケジュールといえば誰もが想像できるほどの過密なものだった。
その後、メンバーを含めた彼らは、その二文字に関しては一言も交わさないまま、さらなる上のBOØWYを目指し、黙々と作品作りやライブ活動に打ち込んでいったという。そこには到達点をしっかりと見据えた者だけが体現できる、圧倒的な集中力に根ざしたパワーが漲っていた…



<引用元・参考文献『J-POP名曲事典300曲』/富澤 一誠(ヤマハミュージックメディア)>

【氷室京介オフィシャルサイト】
http://www.himuro.com

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