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エリー・グリニッチを偲んで〜60’sアメリカンポップスの金字塔「Be My Baby」を生んだ女性ソングライターの足跡と功績

2021.08.26

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2009年8月26日、ニューヨークの聖ルカ・ルーズベルト病院でエリー・グリニッチ(享年68)が死去した。
数日前に肺炎で入院し、そのまま心臓発作で亡くなったという。
彼女は夫のジェフ・バリーとの作曲チームを組んで60’sアメリカンポップスのヒット曲を量産したソングライターだった。
代表作にはフィル・スペクターと共に作り上げたザ・ロネッツの「Be My Baby」や、ザ・クリスタルズの「Da Doo Ron Ron」、そしてトミー・ジェイムス&ザ・ションデルズが歌って全米1位を獲得した「Hanky Panky」などがある。





1940年10月23日、彼女はニューヨークのブルックリンで生まれる。
父親は敬虔なカトリック信者で電気技師を仕事としならが絵描きでもあった。
母親はロシア系ユダヤ人で百貨店の支配人をしていた。
音楽好きだった両親の影響で、幼い頃からアコーディオンを弾いていたという。
彼女が10歳になった年に、一家はニューヨーク郊外のレヴィットタウンに引っ越しをする。
まだ十代にも関わらず、彼女はピアノを独学でマスターし、作曲を始める。
高校時代には友人と3人組のグループ“ジヴェッツ”を結成して、地元のダンスパーティなどで歌うようになる。
高校を卒業すると大学に通いながら自作の曲をレコーディングし、“エリー・ゲイ”という芸名でRCAからリリースもしたが…結果は芳しいものではなかった。
大学で英文学を専攻し、卒業後は数週間ほど英語教師として務めていたという。
しかし、子供の頃から続けてきた作曲への想いを捨て切れずに、教職でなく音楽の道へ踏み出すこととなる。
ちょうどその頃、彼女は叔父が開いた感謝祭の夕食会の席でジェフ・バリーと出会う。
二人は遠縁だったので子供の頃からお互いに存在は知っていたが、ちゃんと話をしたのはこの時が初めてだった。
彼女よりも二つ歳上だったジェフは当時すでに最初の妻と結婚していたので、二人は特に異性として意識し合うことはなかったという。
その後、ジェフの離婚をきっかけに二人は惹かれあうようになり、運命の糸に導かれてゆく。
1963年10月28日(当時23 歳)に二人は結婚すると、パートナーとして楽曲を合作するようになる。
当時プロデューサーとして頭角を現し始めていたフィル・スペクターとロネッツやクリスタルズなどに楽曲を提供するようになり、彼らは一躍ヒットソングメーカーとなる。
以降、夫妻は“ザ・レインドロップス”の名前で活動をスタートさせる。
「The Kind Of Boy You Can’t Forget」という曲がトップ20にチャートインしたり、1964年は彼らの曲「Do Wah Diddy Diddy」をマンフレッド・マンがカヴァーし大ヒットとなる。
仕事面では絶頂にあった二人だが、結婚生活は上手くいっておらず1965年の年末に離婚をする。
翌1966年には彼らが歌った「Hanky Panky」をトミー・ジェームズ&ザ・ションデルズがカヴァーし全米1位を記録。
その後、彼女はソロ名義での活動と並行して多くのアーティストに楽曲を提供する。





1983年にはシンディー・ローパーのデビューシングル「Girls Just Want to Have Fun」のB面曲「Right Track Wrong Train」を共作し、1stアルバム『She’s So Unusual』でもバッキングボーカルとして参加。
1991年にソングライターの殿堂入りを果たし、2004年にはローリングストーン誌の「最も偉大なロックソング500」に6曲が選ばれ、作曲部門としては最多の記録を残している。
そして2010年、ロックの殿堂の最高栄誉賞の一つでもあるアーメット・アーティガン賞を受賞。
彼女が亡くなった翌月の2009年9月20日、ブルース・スプリングスティーンとEストリートバンドがシカゴで行なった公演で『Da Doo Ron Ron』を歌い、その死を悼んだ。
スプリングスティーンはステージ上で彼女にこんな言葉を捧げた。

「エリーは素晴らしいロックとソウルを生み出したソングライターだ!」


カリフォルニアのサンタモニカピア(ロサンゼルスの観光スポットとして有名な桟橋)ではパティ・スミスが即興で「Be My Baby」を歌い、彼女に哀悼の意を表した。



【佐々木モトアキ プロフィール】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12648985123.html

【TAP the POP佐々木モトアキ執筆記事】
http://www.tapthepop.net/author/sasaki



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