「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信

TAP the POP

Extra便

ビートルズの原点となったデビュー曲「ラヴ・ミー・ドゥ」から始まった輝かしい歴史

2018.10.05

Pocket
LINEで送る

ビートルズのメンバーたちはみんな、第二次世界大戦の戦火の下で生まれ育っている。
ジョン・レノンとリンゴ・スターが1940年、ポール・マッカートニーが1942年、ジョージ・ハリスンが1943年と、この世に生をうけたのはいずれも戦時中のことだ。

彼らは戦争を知っている子どもたちであり、それと同時に愛をほしがっている子どもたちでもあった。

ビートルズの歴史がスタートする記念すべきデビューシングル「ラヴ・ミー・ドゥ」は、ポールがソング・ライティングを行ったものだが、ジョンが手伝って完成したと言われている。

愛してほしい
そうさ 愛している
いつだって 嘘じゃない
だから 愛してほしい
愛してほしいんだ




ポール・マッカートニーは1956年、14歳のときに乳ガンに罹った母を亡くしている。
母の死による悲しみをまぎらわすためギターに熱中したポールは、ラジオから流れてくるアメリカのロックンロールを聴いて、それをカヴァーするのに夢中になった。
そして1957年7月6日にジョンと出会って、同じバンドで活動を始めたのがビートルズの原点だ。

それからおよそ1年後、ジョンの産みの母だったジュリアが交通事故で7月15日に亡くなった。
ともに多感な思春期に母を失くしたジョンとポールは一緒に「ラヴ・ミー・ドゥ」を歌うことで、無意識のうちに生きている証を確かめていたのではないかと思われる。

1962年6月6日にロンドンのEMIスタジオで行われたデモテープ録りの後で、プロデューサーだったジョージ・マーティンから、ドラマーを替えたほうがいいとのサジェッションを受け入れて、ビートルズは新たにリンゴ・スターを迎え入れた。

そして9月4日にはマーティンが用意してくれた「ハウ・ドゥ・ユー・ドゥ・イット」と、自分たちのオリジナル曲「ラヴ・ミー・ドゥ」をデビュー・シングルとして仕上げた。

経験豊かなマーティンはこのとき、ヒットを出して成功したいならば「ハウ・ドゥ・ユー・ドゥ・イット」を出すべきだと主張した。
だが、ジョンはそれを強く拒否した。
ポールがその理由について、後にこのように話している。

僕たちはその曲をマスターして、試しにレコーディングした。でも、やっぱり、自分たちには向いていないと感じた。
僕らはバンドのイメージというものに対して気を配っていたんだ。
他の連中とは違う存在でありたかったのさ。


どうしても自分たちのオリジナル曲で行きたいーー、そう主張したために再びレコーディングが行われたのは9月11日だ。
自分たちが自分たちのやり方で音楽をつくること、そこへのこだわりこそがビートルズの将来を決めたと言える。

ただし、マーティンは新メンバーになったリンゴのドラムも良しとはせず、キャリアのあるアンディ・ホワイトにドラムを担当させている。
まだ自分を主張できなかったリンゴは、屈辱をこらえてタンバリンを叩いた。

「ラヴ・ミー・ドゥ」は何だったと思いますかと訊かれて、ジョンは簡潔にこう答えている。

「ロックンロールですよ、かなりファンキーな」


それはマーティンが選んでくれたポップソングを、自分たちらしくないと感じて拒否した理由にもなっている。
完成した「ラヴ・ミー・ドゥ」と「P.S.アイ・ラヴ・ユー」は、10月5日にデビュー・シングルとして発売になった。

だが10月5日に発売された「ラヴ・ミー・ドゥ」は、いきなり人気をさらったわけではなかった。
イギリスのヒットチャートでは伸び悩んで、最高でも17位までしか上昇しなかったのだ。

%e3%83%93%e3%83%bc%e3%83%88%e3%83%ab%e3%82%ba%e3%81%ae%e5%ba%83%e5%91%8a


しかしセカンド・シングルのオリジナル曲「プリーズ・プリーズ・ミー」が1963年の1月から大ヒットしたことで、ビートルズを取りまく世界が一変していく。
ライブに観客が押し寄せるようになると人気が加熱し過ぎて、歌と演奏が歓声でかき消されるのが当たり前になっていった。

そして「抱きしめたい」の大ヒットで1964年に入ってアメリカを席巻したビートルズ旋風の真っ只中で、「ラヴ・ミー・ドゥ」は5月30日に全米チャートで第1位を獲得した。


<参照コラム>9月4日に行われたビートルズのレコーディングで用意されたデビュー曲を「クズだと思う」と言ったジョン・レノン

(注)このコラムは2016年9月23日に公開されたものに加筆修正を施しました。

Pocket
LINEで送る

あなたにおすすめ

関連するコラム

[Extra便]の最新コラム

SNSでも配信中

Pagetop ↑

トップページへ