文末に
託す言の葉
君恋し
ビートルズの英国でのデビュー・シングル「ラブ・ミー・ドゥー」のカプリング・ナンバーであり、デビュー・アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』に収録された「P.S.アイ・ラブ・ユー」は、ビートルズのハンブルグ時代に書かれた作品である。
1962年、彼らはハンブルグにあるスタークラブという店のハウス・バンドとして活動していた。残されている写真では、革ジャンにリーゼントの、いかにもロックンローラー然としたメンバーの姿を見ることができるが、ポール・マッカートニーはすでにこのようなメロディアスな曲を書いていたことになる。
この曲は彼らの、そして彼らのファンたちのお気に入りであった。1962年のパラフォン・レコードのオーディションの際にも、この曲は演奏されている。そしてバンドは、この曲をデビュー・シングルにするつもりであった。
だが、待った、がかかる。
同じタイトルのヒット曲があったからである。
それは1953年にヒルトッパーズというコーラス・グループがヒットさせた「P.S.アイ・ラブ・ユー」で、曲自体は、1934年に書かれたものである。作詞はジョニー・マーサー、作曲はゴードン・ジェンキンス。旅先から届いた手紙の最後に「追伸 愛してる」と書かれていた、という内容の歌である。そしてポールが書いた曲も、恋人に手紙を送るという設定だった。
かくして、シングルのA面は「ラブ・ミー・ドゥー」になったのだが、もし「P.S.アイ・ラブ・ユー」で彼らがデビューしていたら、どうだったのだろう。セカンド・シングル「プリーズ・プリーズ・ミー」の発売を待つことなく、チャートの1位を飾っていたのだろうか。