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「エイト・デイズ・ア・ウィーク」と8本の腕

2016.09.29

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 さて、クイズです(^^)

 次の10曲は、ビートルズのデビューから10枚のシングルを英国での発売順に並べたものです。曲のあとにカッコがあり、それぞれ、◯☓△という記号が入っていますが、それぞれの記号にはどんな意味があるでしょうか。

1 ラヴ・ミー・ドゥ(◯)
2 プリーズ・プリーズ・ミー(◯)
3 フロム・ミー・トゥー・ユー(△)
4 シー・ラヴズ・ユー(☓)
5 抱きしめたい(◯)
6 キャント・バイ・ミー・ラヴ(☓)
7 ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!(△)
8 アイ・フィール・ファイン(◯)
9 涙の乗車券(◯)
10 ヘルプ(☓)


 今、上映中のドキュメンタリー映画のタイトルにもなっている「エイト・デイズ・ア・ウィーク」を聴きながら、考えてみましょう。


 ああ、君の愛が必要なのさ、ベイブ
 本気だってのはわかるだろ
 君もこの僕を必要であってくれたらね
 僕が君を必要であるように



「エイト・デイズ・ア・ウィーク」は、1964年の年末にイギリスで発売されたアルバム『ビートルズ・フォー・セール』に収められた曲で、アメリカでは「アイ・フィール・ファイン」の後のシングルとして発売されています。
 ◯☓△クイズのヒントということでいえば、この「エイト・デイズ・ア・ウィーク」は(◯)もしくは(△)です。
 何だそれ!と怒らないでください。だって、この曲はそれまでの曲とはまったく違った斬新なイントロなんですから。。。

 あ、口が滑ってしまいました。
 そう、この◯☓△は、イントロがあるか、ないか、そのどちらとも言えないのか、の別を表現した記号だったのです。
 普通、ポップスの曲にはイントロ=導入部の演奏がついていますが、ビートルズの初期のシングルには、突然歌い出すパターンのイントロなしの曲が多いのに気づかされます。そして「シー・ラヴズ・ユー」「キャント・バイ・ミー・ラヴ」「ヘルプ」といった初期の代表曲がイントロなしだということは、いかに、当時のビートルズ・サウンドがキャッチーであったかを物語っているように思えます。



 では、(△)は。。。
「フロム・ミー・トゥー・ユー」はイントロがコーラスで始まっている曲です。ですから(△)ですが、限りなく(☓)だとも言えるでしょう。
 次に「ビートルズがやって来る~」ですが、この曲もジャーンとコードがかき鳴らされただけで歌が始まりますから(×)に近いと言えるかも知れません。
 しかし、「エイト・デイズ・ア・ウィーク」は、この2曲とは違っているのです。

 もう一度聴いてみましょう。


 ああ、君の愛が必要なのさ、ベイブ
 本気だってのはわかるだろ
 君もこの僕を必要であってくれたらね
 僕が君を必要であるように

 そう。この曲のイントロはフェード・インで始まっているのです。フェード・アウトで終わるレコードはよくありましたが、フェード・インで始まるシングル曲は、ほとんど存在しませんでした。

 ところでこの曲、最初は「ヘルプ」と呼ばれることになる映画のタイトル・ソングとなる予定でした。


 1週間に8日
 君を、愛、愛、愛してる
 1週間に8日
 それじゃこの気持ちを表せないのさ

 1週間に8日、という印象的なフレーズはどこからやってきたのでしょう。

(1)ポールがジョンの家に向かう途中、運転手に挨拶したところ、運転手が忙しさを表現する時に使った言葉。
(2)リンゴがあまりの多忙さに、思わず口をついた言葉
 と、ふたつの説がありますが、(2)の説が優勢のようです。

「ヘルプ」と題されることとなるビートルズの主演映画は、当初、「エイト・アームズ・トゥ・ホールド・ユー」と呼ばれていました。「貴方を抱く8本の腕」とは、もちろん、ビートルズの4人のメンバーのことです。この8本という音に、8日がよく合う、と考えられたのでしょう。
「ヘルプ」という(☓)の名曲が生まれたことから、この曲はイギリスではシングル・カットされることもありませんでしたが、今回、ドキュメンタリー映画のタイトルとなったことで、見事、スポットライトが当たったのです。


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