街の歌

カリフォルニア〜カナダ出身のジョニ・ミッチェルが歌った、ありのままの自分を受け入れてくれる場所〜

2016.01.31

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フランスのパリの公園に座って新聞を読んでいる
酷いニュースばかり…
彼等は平和のことなど考えていないのよ
平和はひと握りの人が考えていた夢にすぎないのよ
まだ見たいところはたくさんあるわ
でも、もうここにはいたくない
ここは古すぎるし、冷たすぎるし、他人のことなどおかまいなし
ああ、でもカリフォルニア…
私はカリフォルニアに帰るわ
そして、気の合う人達と会って楽しむの
サンセットのポリ公にだってキスしちゃうわ
カリフォルニア、私は帰るわ


グレシアン島でレッドネックに出会ったわ
彼は山羊ダンスが凄く上手だった
彼は私に微笑み返したわ
でも、私のカメラを“売る”ために返してくれなかった
あのゴロツキ、赤い首をしたゴロツキよ
彼は美味しいオムレツとシチューを作ったわ
私、彼と少しだけ一緒にいたかもしれない
でも、心はカリフォルニアを求めてやまなかったの
カリフォルニアに帰るわ
質の良いロックンロール・バンドのような気分
私はあなたの大ファンよ
カリフォルニア、あなたのもとに帰るわ


ジョニ・ミッチェルの歌に「California」という名曲がある。
それは彼女が1971年に放った不朽の名盤『Blue』に収録されていた。
当時から画家としての才能も発揮していた彼女は、このアルバムをキャンバスに見立てて“自由で複雑難解な女心”をリリカルに歌い描いたのだ。

この「California」は、彼女が二十代中頃にフランスやスペインを訪れた時に“カリフォルニアに帰りたい”と思った気持ちが率直に描かれている歌だ。
もともとカナダ出身の彼女は、60年代の半ばからニューヨークに渡り、その後、カリフォルニア州のローレル・キャニオン(ロサンゼルスの近郊で、東のウッドストック同様に芸術家が集まる町)に移り住み、カリフォルニアの陽光に包まれながら暮していた。

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当時、ローレル・キャニオンは店などほとんどない不自由な場所で、道路は車がすれ違うのも大変なほど狭かった。
そんな小さな町でイーグルスやグラム・パーソンズ、ザ・バーズが曲を創作したり、ジム・モリソンが詩を紡いだり、フランク・ザッパが新たな演奏スタイルを探求していたという。
その他にも、リンダ・ロンシュタット、ニール・ヤング、ママス&パパスのキャス・エリオットなど後に大きな成功を収めることになるミュージシャン達が、このローレル・キャニオンに集まったのは、安い家賃のためだったようだ。

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このアルバムで彼女は、ギターやピアノの他に“ダルシマー”と言う楽器を弾きながら歌っており、この曲もその一つである。
歌詞の中に出てくる“酷いニュース”というのはベトナム戦争のことを指していて、当時の空気感もしっかりと伝わってくる内容となっている。
異国の街を旅しながら、カナダ出身の彼女がカリフォルニアを「故郷」と呼び、一日も早く帰りたがる想いの裏には何か特別な愛着があったのだろう。
たとえそこが生まれた場所ではなくても…ありのままの自分を受け入れてくれる場所。
人はそれを「帰る場所」=「故郷」というのかもしれない。

一人で歩いていると とても孤独を感じるのよ
通りでは知らない人ばかりだし
新聞で読む故郷のニュースは どれも酷いものばかり
憂鬱になるようなものばかり

だから私はチケットを買ってスペインまで飛んだわ
赤土の道を行ったところのパーティーに出かけてみたの
そこには沢山の素敵な人達がいたわ
みんなローリングストーン誌やヴォーグを読んでいたわ
彼等は私に訊くの「いつまでここにいられるんだい?」
「1〜2週間、肌がこんがり焼けるまでね。」
「それから故郷のカリフォルニアまで帰るの。」
カリフォルニア、私は帰るわ
このままの私を受け入れてくれる
他の男に引っかかってしまったけど…
カリフォルニア、私は帰るわ

ああ、散歩して 知らない人ばかりが道に溢れていたら
凄く孤独を感じるものよ
新聞で読む故郷のニュースは
ますます戦争のことや大胆な変化ばかり…
ああ、私をこのまま受け入れてくれる
私をありのままで受け入れてくれますか?
このままの私を受け入れてくれますか?


それは昨年(2015年3月31日)の出来事だった。
カリフォルニア州のロサンゼルスの自宅で意識不明の状態で彼女が発見された。
ロサンゼルス消防署のスポークスパーソンによると、通報を受けて救急治療隊がベルエア地区にある自宅に駆けつけて彼女を病院に搬送したという。
脳動脈瘤を患っていたが、後見人を務めるレズリー・モリスの最近の発表によると、すでに病院を退院しており、自宅で毎日療養を続けているという。
弁護士のレベッカ・J・サインは『ピープル』誌に対し、2015年6月26日にジョニ・ミッチェルの自宅を訪問したときの様子について「私が訪ねた時に彼女はキッチンに座り、昼食を食べていた」とコメントしている。
「彼女は、介護スタッフから昼夜を問わず手厚いケアを受けていると話していました。家に帰れてうれしいこと、順調に回復していることは顔を見れば明らかでした。彼女は現在も毎日理学療法士による治療を受けており、全快できる見込みとなっています」と語った。
──引き続き、彼女の順調な回復を祈りつつ…リスペクトとエールを込めてコラムを綴りました。
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ジョニ・ミッチェル『Blue』

(1971/Warner Bros.)


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