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A Place in the Sun〜黒人たちに希望をあたえたスティーヴィー・ワンダーの歌声

2015.09.27

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あの東日本大震災から二年後のことだった。
日本車(トヨタ) のシリーズCM“Re BORN”にスティーヴィー・ワンダーの名曲が起用された。
希望に満ちたそのメロディーをバックに、織田信長に扮した木村拓哉と、豊臣秀吉に扮した北野武がこんな会話を交わす。

キムタク(信長)「ところで俺たち何で東北走ってるんでしたっけ?」
たけし(秀吉)「何でだろうなぁ?でも道がつながってるから来れたんだよな。」
キムタク(信長)「え?」
たけし(秀吉)「震災の時は道が途切れて来たくても来れなかったもんな。」
キムタク(信長)「そうっすね…。俺達がこうやって東北を走ってるって、治り始めた体に新鮮な血液を流すみたいなことなんすかね。」
たけし(秀吉)「それにさ、楽しいだろ?知らない土地行くのって。」



この「A Place in the Sun(太陽のあたる場所)」は、まだ16歳だったスティーヴィー・ワンダーが1966年に発表した曲だ。
11歳でモータウンと契約して、12歳で“盲目の天才少年”としてデビューした彼の6枚目のスタジオアルバム『Down to Earth』の1曲目に収録されたリードソングである。
シングルカット盤は全米ポップ・チャートで9位、R&Bチャートでは3位を記録し、彼の初期作品を代表するヒット曲となった。


長く孤独な川の流れのように
僕は夢に向かって走りつづけている
ずっと、ずっと先へと

太陽があたる場所は必ずあるのさ
そこにはすべての人達の希望があるのさ
不安な気持ちでいっぱいな僕の心が駆け込むところ
そこは太陽があたる場所なんだ


自作曲の多いスティーヴィーだが、この楽曲はロン・ミラーとブライアン・ウェルズというモータウン所属の“黒人系ではない”ソングライターが手掛けたものである。
スティーヴィーは、この歌を発表する前年にボブ・ディランの「Blowin’ In The Wind(風に吹かれて)」をカヴァーして、全米ポップ・チャートで9位、R&Bチャートでは堂々1位を獲得している。


どれだけ道を歩いたら
一人前の男(一人の人間)として認められるのか?

いったい幾年月を重ねれば
あの人々に自由が許されるんだろうか?



1963年に発表されたこの「Blowin’ In The Wind(風に吹かれて)」は、ディラン本人の意図は別として…当時、アメリカの黒人(アフリカ系アメリカ人)が公民権の適用と人種差別の解消を求めて行った“公民権運動”のシンボルソングとして広く知られるようになった。
同じ時代背景の下で発表されたこの「A Place in the Sun(太陽のあたる場所)」も、不平等な扱いを受けていた多くの黒人たちに希望をあたえる歌となった。
当時、日本のレコード会社が(勝手に!?)カップリングして発売したシングル盤「太陽のあたる場所/風に吹かれて」は、現在入手困難な“レア盤”となっているという。


太陽のあたる場所…それは生まれた国や肌の色によって変わってはいけないもの。
あの大震災を経験した東北は、いま力強く復興への道を歩んでいると聞く。
原発事故を経験したあの場所はどうだろうか?
今あらためて耳を傾けると…名曲と言われるこれらの歌が、様々な問題を抱えながら生きる我々に大切なことを教えてくれるような気がする。



スティーヴィー・ワンダー『the definitive collection』

スティーヴィー・ワンダー『the definitive collection』

(2007/ユニバーサルミュージック)

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