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トム・ペティの名曲「レヒュジー」はいかにして生まれたのか

2017.10.05

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 トム・ペティは1950年10月20日、フロリダ州ゲインズビルで生まれた。ゲインズビルは、ナショナル・グラフィック誌が「最も住みやすく遊べる都市」と評価したように、交通の便もよく、気候も温暖な土地である。

 ゲインズビルの中心は、フロリダ大学だった。スポーツ飲料ゲータレードは、フロリダ大学のアメリカン・フットボール・チーム、フロリダ・ゲーターズのために、フロリダ大学のロバート・ケード博士が開発したドリンクだった。フロリダ・ゲーターズがこのドリンクを公式に使い始めた1967年、チームはオレンジ・ボウルに進出し、勝利を収めたことから、ゲータレードは一躍、有名になった。

 その1967年、17歳になっていたトム・ペティはマッドクラッチというバンドを結成している。
 楽器は、大学からほど近い楽器店の男から学んだ。翌1968年にはフローというバンドを組んでニューヨークに向かうことになるその男との出会いは、ロックンロールの神が用意したとしか思えない。男の名は、ドン・フェルダー。後にイーグルスに加入することになるギターの名手である。

 ドン・フェルダーはあらゆるジャンルの音楽に精通していた。少年時代からスティーヴン・スティルスや、やはりイーグルスに参加することになるバーニー・レドンと演奏を楽しんできただけでなく、ジャズにも詳しかったし、デュアン・オールマンからスライド・ギターの手ほどきも受けていた。
 実際、イーグルスが『オン・ザ・ボーダー』の録音でスライド・ギターの名手を探していた時、バンドにドン・フェルダーを推薦したのは、バーニー・レドンだったのである。
 高校生だったトム・ペティは、ドン・フェルダーからギター・テクニックだけでなく、様々な音楽を吸収していった。

 1974年。マッドクラッチはロスに拠点を移すが、バンドは解散してしまう。トム・ペティはマッドクラッチからの仲間だったマイク・キャンベルに、ベンモント・テンチ、ロン・ブレア、スタン・リンチを加え、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズとして1976年、『アメリカン・ガール』で待望のデビューを果たす。
 だが、レコードは売れなかった。バンドはニルス・ロフグレンのツアーの前座を務めるなど、地道な苦労を重ねていくと、レコードも少しずつ売れ始めていった。
 セカンド・アルバム『ユア・ゴナ・ゲット・イット』は、アルバム・チャート23位まで上昇した。少しずつ、希望が見えてきた時だった。
 突然、レーベル移動の話が持ち上がったのである。

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズは、レオン・ラッセルなどが設立したシェルターから、レコードを発売していた。だが、シェルターは、小さなレコード会社だった。レコードを作ることはできたが、売るための組織は持っていなかった。シェルターは、販売業務を大手のABCレコードに委託していたのである。
 ABCレコードは、1955年に設立されたレコード会社で、3大ネットとして有名なアメリカン・ブロードキャスティング・カンパニー(ABC)の子会社だった。CBSテレビがCBSレーベルをもっていたように、ABCも傘下にレコード会社をもっていたのである。
 ABCレコードは、ポール・アンカなどの看板スターを抱え、メジャー・レーベルとして君臨していた。だが、1970年代後半、その勢いは衰えていた。そこに、MCAによる買収劇が起こったのである。
 シェルターという名前のレコード会社にいたバンドが難民になろうとしていたのである。
「僕らが知らないところで、ABCは僕らをMCAに売ろうとした。そのことに、頭に来たのさ」と、トム・ペティは語っている。

「レヒュジー」。難民という意味の楽曲は、この買収劇を背景に書かれたものだった。
 曲を書いたのは、ギターのマイク・キャンベルだった。フロリダ時代からのメンバーであるマイクは、後に、ドン・ヘンリーの「ボーイズ・オブ・サマー」などを書くことになるメロディー・メイカーだが、この「レヒュジー」が一番のお気に入りだと語っている。
 マイクは、この曲を録音した時のことをよく覚えている。スタジオの係員の女の子が、「レヒュジー」のトラックダウンを聞いて、こう言ったのだ。
「ヒットね。大ヒット!」
 マイクとトムは顔を見合わせて言った。
「たぶん、ね」

「レヒュジー」を収録したバンドのサード・アルバムは、全米アルバム・チャートの2位まで上昇した。だが、1位にドンと居座っていたのは、ピンク・フロイドの『ザ・ウォール』だった。
 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズは、この「レヒュジー」で、初めてのサタデイナイト・ライヴ出演を果たしている。



 以後、「レヒュジー」は様々なアーティストにカバーされてきた。トム・ペティは、自身の楽曲のカバーの中でどれがベストか、というツイッターのQ&Aに対して、こう答えている。

「これまで聴いた中ではメリッサ・エスリッジの歌う『レヒュジー』がベストだと思うよ」





トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ『破壊』
Universal

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