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「TAP the COLOR」連載第15回
広大なアメリカに耳を傾けながら音楽の旅を続けていると、僕たちは例外なくフォーク、カントリー、ブルース、リズム&ブルースといったルーツミュージックと出逢うことになる。もとはアイルランド系移民や黒人たちによって育まれてきた土の匂いが漂う音。旅路で流せば、きっと土埃が歓迎してくれることだろう。
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ボニー・レイット『Luck of the Draw』(1991)
1970年代からブルースを根にしながら、スライドギターの名手としてスモーキーな歌声とともに地道な活動を続けてきた彼女。前作『Nick of Time』は遂にグラミーまで受賞して一気に表舞台へ。本作でもドン・ウォズがプロデュースを担当、ポール・ブレイディの曲などを取り上げている。全米だけで700万枚を売った事実も嬉しい。
メリッサ・エスリッジ『Yes I Am』(1993)
本作リリース前にはレズビアンであることをカミングアウトして話題になったりしたが、その音楽にはデビュー作から変わらぬアメリカの土が敷き詰められ、ハスキーな力強い声が恵みの雨となり、不毛な土地に花を咲かせる魅力的なものだった。全曲自作。精力的なツアー活動を続けて全米600万枚のセールス。
シェリル・クロウ『Tuesday Night Music Club』(1993)
全米だけで700万枚を売った素晴らしきデビュー作。有名プロデューサー盤をお蔵入りさせて自分たちで作り上げた。カントリーをはじめとする良質なルーツ音楽の血が全曲に渡って生き生きと流れている。ポップな曲でさえ彼女が歌うとアメリカ大陸的になるから不思議だ。ゾクゾクするような名曲も多数収録。
ギリアン・ウェルチ『Time (The Revelator)』(2001)
マウンテンミュージックやブルーグラスに影響を受けながら、素朴な音色と深みのある歌唱で、アメリカ大陸の名もなきスモールタウンの情景や人々の物語を綴っていく名作。都市生活では聞こえようもない吹き抜ける風に土埃が立つ音。パートナーであるギタリスト、デイヴィッド・ロウリングスの存在も極めて重要だ。
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