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クライ・ベイビー〜イギー・ポップも出演したジョニー・デップ初主演作

2019.07.10

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ジョニー・デップの名を一躍有名にしたのは1990年のティム・バートン監督『シザーハンズ』だったが、実は同年に初主演作『クライ・ベイビー』(Cry-Baby/1990)があったことを覚えている人は少ない。

監督はディヴァイン主演の『ピンク・フラミンゴ』などで知られるカルト・ムービーの帝王、ジョン・ウォーターズ。デップはこの監督を非常にリスペクトしており、出演できることに歓喜したという。

ウォーターズは前作『ヘアスプレー』(1988)のまずまずのヒットのおかげで、今まで縁のなかったようなハリウッドの連中から声が掛かるようになった。そんなこともあって『クライ・ベイビー』の制作費は、前回の250万ドルから一気に1200万ドルまで跳ね上がった。

映画ではいつにも増してクセのあるキャスティングが実現。特にイギー・ポップとトレイシー・ローズの出演は本作に独特のムードを与えている。

イギーはデップの祖父役(祖母の再婚相手)というやや無理のある設定だが、1950年代が舞台のスクリーンの中でも妙なパンク精神が漂っていて危ない魅力を放つ。

対してトレイシーは、この映画に圧倒的な美しさと色気を充満させる。彼女の名を知らない今の50代男性はいないだろう。15歳でポルノクイーンとなり、未成年であることが深刻問題化して数奇な人生を余儀なくされた彼女は、20歳を過ぎてからは本格的な女優としての道を模索していた。ジョン・ウォーターズは「この映画に関わるほとんどのキャストやスタッフに逮捕歴がある」と言って、彼女を安心させたという。

また、『プラトーン』で個性派俳優の評価が高まったウィリアム・デフォー(ジョニー・デップは同作品に兵士役として少しだけ映っている)がイカれた看守役として出ている点にも注目だ。

赤い服がトレイシー・ローズ。車の上にいるのがジョニー・デップ。そして後部座席から顔を出すイギー・ポップ。

どの映画も音楽を聴きながら作ってるんだ。脚本の段階で音楽も出来上がっている。作曲ではなく、映画のイメージや年代に合った曲を収集していく。


これは音楽マニアでもあるウォーターズの映画作りの美学の一つだが、『クライ・ベイビー』ではエルヴィス・プレスリー主演のミュージカル映画や1950年代のティーンエイジ映画をサンプリング。

階級差の恋、ロカビリー、リーゼント、バイク、刑務所、チキンレースなど、定番アイテムをこれでもかと取り入れながらも、やはり“他とちょっと違う”ジョン・ウォターズ作品に昇華させているのはさすが。早い話、時代設定もストーリーも、この監督の場合なら魅せてくれればどうだっていいのだ。こういうスタンスで映画を撮り続けることができるのも実にアメリカらしい。

予告編


『クライ・ベイビー』

『クライ・ベイビー』


*日本公開時チラシ

*参考・引用/『クライ・ベイビー』DVD特典映像

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
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