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吉田拓郎から衝撃を受けたことから始まった、あいみょんの歌

2018.05.14

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 フォークソングや歌謡曲の歌詞は、聴く者に風景や物語を想起させる。それはまるで歌詞とメロディによって別世界へと誘われるようであり、一本の映画を見た後のような心地よさを聴く者に与える。

 そんな60年代、70年代の音楽に通じる歌詞世界を作り出しているのが女性シンガーソングライター、あいみょんだ。

彼女のルーツは、幼少期に出会ったシンガーたちにある。
 兵庫県の西宮市に生まれたあいみょんは、父親が音響の仕事をしていたこともあり、幼い頃から音楽に慣れ親しんでいた。

 そんなあいみょんが音楽に衝撃を受けたのは小学生の時だ。
 昭和30年代から40年代の日本を描いたアニメ映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!大人帝国の逆襲』で流れた、吉田拓郎の「今日までそして明日から」に心を掴まれたのだという。



 それから程なくして、父親の部屋に入ってはCDをこっそり聴くようになる。好んで聴いたのは浜田省吾、尾崎豊、小沢健二のような男性のシンガーソングライターたちだった。
 彼らは一つの曲で、比喩や韻を巧みに使いながら短編映画のようなストーリーを作り出す。あいみょんが聴いてきた言葉たちは、自然と彼女が作る楽曲の血となり肉となっていった。

 高校生になると曲を作り始め、友人の勧めで参加したオーディションでは決勝まで進出する。
 賞は逃すもその時の動画がインディーレーベルの目に止まり、わずか19歳でデビューを果たした。

 力強い歌声とストレートな歌詞が話題を呼び、あいみょんという不思議な名前は音楽ファンの中で徐々に広まっていった。
 デビュー後も豊かな歌詞表現を模索し、音楽だけでなく映画や小説からヒントを得ようとしていたという。

 そうした試みが結実したのが、2016年にリリースされたメジャーデビューシングル「生きていたんだよな」である。
 家の近くで飛び降り自殺をした少女に想いを馳せるという内容の歌詞が、70年代のフォークソングのようなまくしたてるようなメロディで歌われる。

彼女が最後に流した涙
生きた証の赤い血は
何も知らない大人たちに
二秒で拭き取られてしまう

立ち入り禁止の黄色いテープ
「ドラマでしかみたことなーい」
そんな言葉が飛び交う中で
いま彼女は何を思っているんだろう
遠くで 遠くで

泣きたくなったんだ 泣きたくなったんだ
長いはずの一日がもう暮れる




 淡々と情景を描写していく言葉と死を目の当たりにした主人公の思考が、情熱的な彼女の声によって立体的な一つの物語として浮かび上がる。

 この曲を皮切りに次々とシングルをリリースし、それらを収めた2017年のアルバム『青春のエキサイトメント』はロングヒットを続けている。
 中でも「君はロックを聴かない」は、ラジオやSNSを通じ多くの人に広まり若い世代からの支持を獲得した。



 ロックを好きな男性が、ロックを聴かない女性に想いを伝えようとする姿を歌った歌詞は、聴き手が一組の男女の関係性を想起できるような見事な描写が光る。

埃まみれドーナツ盤には
あの日の夢が踊る
真面目に針を落とす
息を止めすぎだぜ
さあ腰を下ろしてよ

フツフツとなりだす青春の音
乾いたメロディで踊ろうよ


 この歌の物語は、かつて吉田拓郎が歌った「結婚しようよ」にも通じる普遍性があるように思える。

 「君はロックを聴かない」のヒットにより、あいみょんは初めて人気音楽番組「MUSIC STATION」に出演する。そのステージで、彼女は自分が聴き続けてきた名盤のジャケットとともに演奏した。

 吉田拓郎、浜田省吾、小沢健二、エレファントカシマシ、THE YELLOW MONKEY、スピッツ、andymori。
 日本の音楽シーンを彩ったストーリーテラーたちのジャケットをバックに歌うことによって、あいみょんは自分の音楽を形づくった先人たちへのリスペクトを捧げたのだ。

 2018年にリリースした「満月の夜なら」は、現代的なR&Bのビートに70年代のフォークや歌謡曲のエッセンスを持った官能的な歌詞を乗せるという意欲的な楽曲だ。
 吉田拓郎のような、普遍性の中に新しさを感じさせる彼女の歌は、多くの若者たちに支持されているのである。

(文・吉田ボブ)



あいみょん OFFICIAL SITE


あいみょん『満月の夜なら』
ワーナーミュージック・ジャパン

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