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心の奥から確かな力を感じるんだ~真心ブラザーズ渾身の「メロディー」

2018.10.08

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真心ブラザーズが2017年9月にリリースした3年ぶりのオリジナル・アルバム『FLOW ON THE CLOUD』。
この作品は彼らのルーツである60年代のロックに近づけようと一発録り、さらにはモノラル録音という、50年以上前の手法で制作された意欲作だ。



それからわずか1年、彼らは勢いそのままにニュー・アルバム『INNER VOICE』をこの9月にリリースした。
前作と同様に、今回も一発録りのモノラル録音(奥野真哉のキーボードのみ後から録音)にこだわった。
2014年からLow Down Roulettesとして活動を共にしているベースの岡部晴彦とドラムの伊藤大地を迎え、4人による息の合ったセッションから生まれた、ライブ感溢れる音を届けてくれている。

中でもアルバムのオープニングを飾る「メロディー」は、彼らの原点であるフォークのスタイルを取りながら、字余りの言葉を弾丸のようにぶち込んだYO-KINGらしい歌詞がロック・スピリット溢れ、聴く者の心にズンズンと響いてくる。

「苦労とか努力はしないぞ」っていう覚悟を決めちゃったんだ、音楽に関して。

そのようにインタビューで語るYO-KINGの作詞の秘密が、この「メロディー」の歌詞の中でも赤裸々に歌われている。

そうして、YO-KING自身の言葉で幸福になるためのコツやヒントが、歌詞の中で語られる。

歌詞には、他にも絵描きのフィンランド人や山奥に住む男のライフスタイルを引き合いに出すなどして、6分を超える長尺の楽曲となっている。
50歳を過ぎ、生きてきた年月のぶんだけたくさんの人生経験と言葉のストックを持ち、その中から自然に溢れ出てきた飾らない言葉の洪水をフォーク・ロックに乗せて歌うのは、まさにYO-KINGの真骨頂であり、多くの同世代の共感を呼ぶのではないだろうか。

1989年、大学在学中に音楽サークルの先輩YO-KINGこと倉持陽一と後輩桜井秀俊で結成された真心ブラザーズは、テレビのバラエティ番組の「勝ち抜きフォーク合戦」を勝ち抜いてデビュー。来年には結成30年を迎える。
長いキャリアの中で、ソウル・ミュージックやヒップホップなどから影響を受けた時代もあったが、最近ではカントリーミュージックの要素を取り入れるなど、まだまだ新たな挑戦もしている。
しかし、一発録りの躍動感と気迫の中にも、自由さと肩の力が入りすぎていない心地よさが感じられるのは、キャリアのなせる技と言っていいだろう。

俺は自由にやりたいことをやって、それを正直に見せていく方が誠実だと思うんだよね。


30年近く積み上げてきた経験からしか出せない味わい深さが感じられ、まさにへその奥から確かな力を感じさせてくれる、真心ブラザーズ渾身の「メロディー」なのだ。




※以下のサイトよりYO-KINGの言葉を引用いたしました。

New Album『INNER VOICE』特設サイト インタビュー


エンタメステーション2017年『FLOW ON THE CLOUD』インタビュー


真心ブラザーズ『INNER VOICE』
徳間ジャパンコミュニケーションズ

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