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カーペンターズと宇多田ヒカル、藤圭子の母子をつないだ「遙かなる影」

2014.04.11

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バート・バカラックの代表作となった「遙かなる影(Close to You)」は、俳優のリチャード・チェンバレンが1963年にリリースしたシングルのB面曲だった。その埋もれていた曲をカヴァーして大ヒットに導いたのが、リチャードとカレンの兄妹デュオ、カーペンターズだ。

1969年に出したデビュー・アルバムは、兄のリチャードが書いたオリジナル曲中心だった。だが人気が高かったのは、ビートルズのヒット曲をバラード風にアレンジした「Ticket To Ride(涙の乗車券)」だった。

そこでセカンド・アルバムには、ビートルズやバカラックのカヴァー曲が取り入れられた。

その時期のバカラックはディオンヌ・ワーウィックが歌った「サン・ホセへの道(Do You Know The Way To San Jose)」で、1969年のグラミー賞に輝いていた。
また、映画『明日に向かって撃て!』の主題歌「雨にぬれても(RAINDROPS KEEP FALLIN’ ON MY HEAD)」では、アカデミー主題歌賞を受賞したところだった。

カーペンターズによる「(They Long to Be)Close to You」は、アルバムからシングル・カットされると全米チャートで1位を獲得し、兄妹デュオの名前は世界中へと知れ渡った。



日本でも「遙かなる影」が大ヒットした1970年代の初頭、18歳の藤圭子は自伝的要素の強い「圭子の夢は夜ひらく」がブレイクし、時代の寵児となっていた。
不条理の大人の世界に生きてきた少女の身の上話のような暗い歌、「圭子の夢は夜ひらく」には社会的弱者たちの言葉にならない叫びが込められていた。

細かくビブラートするハスキーな歌声は、日本人のブルースを体現していたのである。
演歌の星として売り出されて大スターになった藤圭子は、日本語によるブルースの魂とロックのグルーヴを最初に表現した女性シンガーだった。

しかし当時の芸能界では、”金のなる木”になった少女に演歌以外を歌う自由は与えられなかった。

それから10年あまりが過ぎて、藤圭子は新天地をアメリカに求めて夢を実現すべく挑戦を始める。

そして1983年1月19日、ニューヨークで長女が生まれた。
「光」と名付けられた娘に、藤圭子はこんな詩を書いている。

あなたが生まれたその日に 天使たちが集まって
そして決めたのよ 夢を実現させようって


光は14歳のときに母の藤圭子、父の宇多田照實とのファミリー・ユニット、「Cubic U」のヴォーカルとしてアメリカでデビューした。
そこでデビュー・シングルに選ばれたのは、バカラックのスタンダード・ソング「遙かなる影」だった。

どうして星たちはいつも、
あなたが歩く側から降ってくるのかしら?
そう、きっと私と同じ、星たちも
あなたのそばにいたいのね


母の夢はそれからまもなく、故郷の日本で叶うことになる。


ちなみに1970年に出た藤圭子のシングル盤「圭子の夢は夜ひらく」のジャケット左下には、『光のプレゼント・レコード』と記されてある。
そして「このレコードの収益は恵まれない人々の施設へ贈られます」という説明がついていた。

圭子の夢は夜ひらく


オムニバス『バカラック・ベスト~生誕80年記念スペシャル』
USMジャパン

Cubic U『Precious』
EMIミュージック・ジャパン

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