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ジョニー・キャッシュ〜とんだところでキースとばったり

2015.09.12

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ロック、カントリー、ソングライター、ゴスペル。4つの部門での殿堂入りを果たした歌手はジョニー・キャッシュをおいて他に誰もいない。

1992年1月、ロックン・ロールの殿堂入りを祝う集いが開かれたニューヨークのホテル「ウオードルフ・アストリア」には、ニール・ヤング、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジ、ジョン・フォガティ、ロビー・ロバートソンなど、多くのミュージシャンが詰めかけていた。

式が始まる前に用を足していたら、誰か後ろに立つ奴がいる。そしていきなり馬鹿でっかい声でを歌い始めた。ほら、『Ride This Train』に入ってる俺のナンバーだ。振り向くまでもない、あいつに決まってる(笑)。


肩を並べたキース・リチャーズは、さらに声を張り上げる。
「凄いぞ、俺は! ジョニー・キャッシュと並んで立ちションしてるんだぜ! お~い、誰か写真を撮ってくれよ!」

「『それだけはやめてくれ!』と俺は慌てて叫んだよ。『明日、セサミ・ストリートに出なきゃなんないんだ!』って」
半年に一度くらいの出演だったが、キャッシュはこの番組が気に入っていた。

「本当にやりたかったんだ。黒服を着て行った先でトラッシュ(ごみ)を片付けて歩く役で、ロニー・トラッシュというキャラクターも作ってくれた」

そのイメージを壊すのが怖かったのか、連れションだったのか、それともキースとのツー・ショットだったのかは分からない。二人並ぶと別の迫力が出てしまう。何せ共通の問題で痛い目にあったことがある猛者(もさ)だった過去もある。

年は離れていたが、ジョニー・キャッシュとこの悪戯小僧はウマがあった。
「オレは子供の時分から、キャッシュ・フリークだった」
初めて聞いたのはイギリスで、まだティーン・エイジャーの頃のこと。もともとカントリーが大好きで、初めてステージに立ったのもカントリー&ウエスタンのバンドだった。

ジョニーの歌もルーサー・パーキンスのギターも凄かった。音楽における間(静寂)の大切さを教えてくれた。
つまり、歌の間じゅう演奏していればいいってわけじゃないってことさ。必要なことだけ演奏すればいいんだ。正しくやれば、信じられないくらいの集中力と強烈さが生まれる。
ロックン・ロールについてもし一人だけコレクションを買うべきとしたら、『チャック・ベリーも捨てがたいけど、やっぱりキャッシュだ』と言うだろうな。



(このコラムは2014年3月12日に公開されたものです)

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