1972年、ロッド・スチュワートはフェイセズに加入して3年目を迎えていた。1月10日生まれのロッドは、年明け早々に27歳になった。
当時のフェイセズは、2ndアルバム『Long Player』のセールスを着実に上昇させながらアメリカツアーを終え、イギリスに戻ってきたばかりだった。その頃のフェイセズの人気といえば、アメリカの2万席あるスタジアム公演が、ほんの数日間で売り切れるほどの人気だった。
フェイセズに加入してからのロッドは、バンドの活動と平行して、ソロシンガーとしてのアルバムもヒットチャートに叩き込む、まさに“二足のわらじ”をはくスター歌手だった。
この年、ロッドは4枚目のソロアルバム『Never a Dull Moment』を発表し、ソロアルバムとして前作にあたる『Every Picture Tells A Story』(1971年)に続き、2作連続で全英アルバムチャート1位獲得を果たすこととなる。
そこにはボブ・ディランの「Mama You Been on My Mind」や、ジミ・ヘンドリックスの「Angel」、エタ・ジェイムズの持ち歌として有名な「I’d Rather Go Blind」、そしてロッド自身が敬愛して止まないソウルシンガー、サム・クックの「Twisting the Night Away」など、ジャンル・国籍・人種を超えた名曲たちが収録されていた。
この頃のロッドのカヴァー選曲、及びアレンジのセンス、そして何より歌唱のクオリティーは、後に更なる成功を遂げていく彼の音楽キャリアにおいて、“最盛期”と言っても過言ではないくらいに優れている。
前作アルバムからのシングルカット曲「Maggie May」が大ヒットを記録して期待が高まる中、この『Never a Dull Moment』のオープニングナンバー「True Blue」は、ロッドと盟友ロン・ウッドによって共作された。
そして、この曲はソロとバンドの垣根を超えて、フェイセズの全メンバーが揃った編成でレコーディングされたという。曲調もサウンドも“完璧”と言ってもいいほどに、当時の彼やバンドの充実振りがうかがえる一曲となっている。
興味深いのは、ロッドが綴った歌詞である。そこには、彼自身の華々しい成功とかけ離れた感情、そして自分の“生い立ち(労働者階級)”への意識が描かれているかのようだった。
この歌詞は、彼が27歳で手に入れていた成功とは“反対”のこと歌っている。当時のロッドは、大邸宅、何台ものスポーツカー、何頭もの馬を持てるほどのスター歌手だった。
確かに自家用ジェット機は持っていなかったかもしれないが、サッカーの試合を観戦したくなったら、一機くらいはチャーターしてスコットランドまでひとっ飛びすることぐらいはできただろう。
そして、この曲のラストの部分には、ちょっとした“皮肉”が込められているのだ。
終奏に入るところで、当時ロッドが所有していたランボルギーニのエンジン音が重ねられる。それはまるで、歌詞の中に登場する「俺=自分」をからかっているかのようだった。
ロッドはファンに自分の成功を知らしめていると同時に、自らの成功を嘲笑っていたのだろうか? その曲のタイトルを「True Blue=自己の主義に忠実な人」としたところにも、なにか皮肉めいたメタファーを感じずにはいられない。
その最高にロールしたグルーヴから、27歳にしてスター歌手になった男の“自信”と“自嘲”が聴こえてくるようだ。

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