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ザ・クラッシュの名曲「ハマースミス宮殿の白人」がリリースされた日

2024.12.23

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1978年6月16日、ザ・クラッシュは「(White Man) In Hammersmith Palais(ハマースミス宮殿の白人)」という楽曲をリリースした。

7インチシングルとして発表されたその歌のクレジットには、作詞作曲:ジョー・ストラマー/ミック・ジョーンズと記されている。

後に米国版のデビューアルバム『The Clash/白い暴動』にも収録されることとなったこの歌は、彼らが当時台頭してきていたパンクシーンから頭一つ抜きん出るきっかけとなった“重要な曲”として、ファンから愛され続けてきたという。

「なぜクラッシュが特別なバンドなのか聞きたいかい? ジョーやミックや俺達の世代は本当に音楽にのめり込んでいたんだ。それは反体制の姿勢としての音楽だった。それがクラッシュのようなバンドと今の全てのくだらないバンドとの違いだ!」

(ドン・レッツ/DJ・映画監督)

この曲のタイトルにもなった“Hammersmith Palais(ハマースミス宮殿)”は、ロンドン西部ハマースミス・アンド・フラム・ロンドン特別区にあった建物で、正式名称は“Hammersmith Odeon”だった。

1992年以降は正式名称が変更されてながらも、一般的には“Hammersmith Apollo”と呼ばれるイベント会場として現在も実在する。

歌詞には、デリンジャー、リロイ・スマート、デルロイ・ウィルソンというレゲエ・ミュージック界のスターの名前が登場し、当時その会場で行なわれたオールナイトのレゲエ・ショーをジョー・ストラマーが体験したところから始まる。

そこで観聴きしたポップでライトなレゲエは、彼が期待していたルーツロック色の強いレゲエの反逆心とはほど遠い、単なるパフォーマンスショーだった。商業化してしまったレゲエに対する失望を歌いつつ、当時のイギリスが抱えていた社会的なテーマに視点を移していく。

反暴力メッセージ、富の配分の状況、黒人と白人の協調への動き、同期のミュージックシーンへの疑問と批判など。

当時、ザ・クラッシュと密接な関係にあったというジャマイカ系英国人ドン・レッツは、この楽曲にまつわる思い出をこう語る。

「ジョーは本場のレゲエを観れると期待してワクワクしてたよ。彼は当時ジャマイカのゲットー(ユダヤ人を強制的に収容した居住区域)に住む人間達をちっとも理解してなかったんだ。連中が何を考えてるかって? 彼らはゲットーから脱出してリッチになりたいと願っていた。それでジョーがあそこに行ったとき観たのは、ゲットー出身の本場のジャマイカの反逆者なんかじゃなく、その代わりにきらびやかなラスベガスのショーみたいなコンサートだったんだ」


世代を超えて愛され、次世代に大きな影響を与えたパンクバンド、ザ・クラッシュがレゲエ・ミュージックへのリスペクトを前面に押し出した最初の曲である。

ジョーは、ジャマイカ発祥の音楽レゲエの持つ新鮮なリズムと、パンクロックに通じる“レベル(反逆)”の精神に惹かれたのだ。この曲には見えない権利への反発と共に、音楽ビジネスの被害者になりつつあったパンクバンドへの批判と皮肉が込められている。

「ジョーはあの夜、自分の勘違いに気づいたはずさ。俺は時々みんなに教えてやるんだ。ゲットーは自ら入って行く場所じゃないんだ。ゲットーとは“そこから抜け出す場所”なんだってね。あのゲットーのスタイルの流行は多くの誤解を招いたんだ。俺にとっては素晴らしいコンサートだったよ。だって俺にとってのレゲエのヒーロー達が観れたんだから。でもジョーは期待してたものと実際観たもののギャップでジレンマを感じてたと思うぜ。もちろんジョーは後になってそれをちゃんと理解した。だからこそこの曲が生まれたんだ。あのフィーリングはまさにレゲエだ。あれは当時みんなが予想していたクラッシュの方向性とは逆の展開で、それがまた彼らの良いところなんだ。毎回々あの曲を聴くと本当に鳥肌が立つんだ。」

(ドン・レッツ/DJ・映画監督)



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執筆者
【佐々木モトアキ プロフィール】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12648985123.html

【公演スケジュール】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12660299410.html

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