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Cigarettes and Coffee〜黒人歌手オーティス・レディングが歌ったラブソングの背景にある“自由に対する至上の喜び”とは!?

2024.12.10

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煙草の歴史と煙草の歌をご紹介します。

煙草のルーツに関して多くの文献に綴られているのが、メキシコのチアパス州にあるパレンケ遺跡のレリーフ(浮き彫り)だ。 この遺跡はマヤ文明が遺したもので、“十字架の神殿”と呼ばれる神殿内の石柱に煙草の起源が彫られているという。

チューブ状のものを口にくわえ、先端から煙を吹かす人の姿は、擬人化された神が煙草をくゆらせる姿を表現しているといわれいる。つまりマヤ文明の時代には、人々がすでに煙草を吸っていたと推測できるというのだ。

当時、煙草から立ち昇る“紫煙”は神からのお告げをもたらすものと考えられ、その炎の動きや煙の形から、戦いの勝敗や未来の吉凶までが占われていた。 また、北アメリカの先住民の間では、部族間の“和を結ぶ儀式”の際にパイプ喫煙が行われていた。

儀式で活用されていた煙草は、ある時期から治療にも用いられるようになる。ネイティヴアメリカン達の間では、霊力を持つ呪術師が煙草の紫煙を用いて悪霊を追い払うことで病気が回復すると考えられていた。

その後、コロンブスが大航海をした時代、煙草は嗜好品として世界中へと広まっていく。「紙巻煙草」「葉巻」「パイプ」などの製品煙草は、ナス科のタバコ属の植物を原料としている。16世紀はじめには、すでに数種のタバコ属の植物が栽培されていたという記録が残っている。日本に煙草が伝来したのは1549年だったという記録が残っている。

フランシスコ・ザビエルが鹿児島に上陸した際に、彼に同行していたポルトガル船員たちが葉巻を吸っていた姿を初めて目にした日本人は、「南蛮人は腹の中で火を焚いているぞ!」と驚いたという。

その後、新しいものや文化を好んだ豊臣秀吉やその側室(淀殿)が、愛煙家だったというのは有名な話だ。


午前2時45分
彼女と煙草とコーヒーを楽しみながら
ここに座って話してるんだ
そして二人は愛を語り合うんだ
「ダーリンとても幸せだよ」
「あなたに出逢えてよかったわ」
「僕もさ…」


この歌は、オーティス・レディングが4thアルバム『THE SOUL ALBUM』(1966年)に収録した一曲だ。タイトルは「Cigarettes&Coffee(煙草とコーヒー)」。

真夜中…時計の針が午前3時を指そうとしている時間に部屋で語り合っている男と女。テーブルの上には煙草とコーヒー。物語が展開してゆくこともなく、ただただ愛を語り合いながら寄り添うカップル。酒を呑んでいる様子もない。歌の主役は、そこにいる男と女、そして煙草とコーヒー。

コーヒーもう一杯飲むよ
ねぇこの煙草に火をつけてくれないか
クリームや砂糖はいらないよ
なんでかって?君がいるからさ


オーティスの素晴らしい歌唱力(表現力)。淡々と抑制されたバックの演奏。ドラムスのアル・ジャクソンやギターのスティーヴ・クロッパーの職人芸が光る。

この曲が録音されたのは、アフリカ系アメリカ人公民権運動に対して新たな権法(Civil Rights Act)が制定された直後。長年アメリカで続いてきた法の上での人種差別は終わりを告げることになった。

17世紀、アメリカ南部の奴隷制プランテーションは煙草栽培から始まったと言われる。人種差別からの解放…それは奴隷の子孫にあたる黒人が自由に煙草を嗜み、愛する人と自由に恋愛を謳歌できる“あたりまえの日々”の到来でもあった。

このシンプルなラブソングには、そんな“自由に対する至上の喜び”が込められているのかもしれない。オーティスは、この歌をリリースした翌1967年12月10日に飛行機事故でこの世を去ってしまう…

それは26年間という輝かしくも短い生涯だった。


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執筆者
【佐々木モトアキ プロフィール】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12648985123.html

【公演スケジュール】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12660299410.html

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