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顔をみせないアーティストの歌〜Sia(シーア)心の叫び声

2021.03.09

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♪「Chandelier」/シーア


パーティーガールは傷つかないの
何も感じない、いつ自覚するの?
感覚を押し殺す  押し殺すの…



11歳の少女が“圧巻の表現力”で踊るこのミュージックビデオが2014年の5月にYoutubeで公開されて以来、現時点で約4億4千万回以上再生され“*バイラルセンセーション”を起こした。
(*ウイルスが拡散するように急速に口コミが広がり注目を集めること)
ここ登場する少女の名は、マディ・ジーグラー(Maddie Ziegler)。
アメリカ国籍のダンサーだ。
彼女はこのミュージックビデオの中で、クラシックバレエのテクニックをベースに、エキセントリックな“パフォーマンス”を披露している。
少女の“踊り”と、美しくも退廃的な“歌声”の見事な融合が唯一無二の世界観を創り出し、世界中の音楽ファンの心を鷲掴みにした。






この曲を歌っているのは、当時“顔を一切公表しない”というその斬新なプロモーション方法で注目を集めたオーストラリア出身のSia(シーア)。
彼女は、1975年生まれの歌手で90年代後半からジャズシンガーとして活躍していた。
日本での知名度は低かったが、歌の上手さとソングライティングの才能には類い稀なものがあり、地道に活動を続けてきた結果、ようやく世界的に認められるようになってきた…その矢先にバセドウ病を発症。
以来、彼女は表舞台には出てこなくなった。
真相は語られたことはないが、病気の治療の為に容姿が変わってしまったことが理由としてあったのかも知れない…。
ここ数年は自身のシンガーソングライターとしての活動を一時休止し、ポップシンガーへの楽曲提供活動を中心に行っていた彼女。
これまでリアーナ、ビヨンセ、ブリトニー・スピアーズ、クリスティーナ・アギレラ、ケイティ・ぺリー、デヴィッド・ゲッタ、エミネム、マルーン5など、トップ・スターたちに楽曲を提供してきたポップス界最大のヒットメイカーでもある。
そんな華々しい活躍の影で…アルコールと薬の依存症にも苦しんでいた。
なんとかそこから抜け出して書き上げたのがこの曲「Chandelier」だったという。

助けて
私はなんとか生き延びたいの
うつむかずに 目を開かずに
朝が来るまでグラスを満たしつづけるのよ
今夜だけの我慢よ 今夜だけのことだから…


タイトルの“Chandelier(シャンデリア)”というのは、彼女が楽曲を提供しているビヨンセやリアーナなどのスーパースターを喩えたものだった。
そして彼女はこの曲を自分で歌うことを決心し、もう一度歌手活動を再開した。
だが、メディアに顔を公開することなく、2013年に米ビルボード誌の表紙に、頭の上から紙袋を被って登場し世間を驚愕させた。






アメリカのテレビ番組に出演し「Chandelier」を披露した際には、カメラに背中を向けて熱唱し、その前代未聞のパフォーマンスが大きな話題を呼んだ。
見ることのできないシーアの表情は、少女のダンスに投影されているかのようだった。
彼女が表を向いて歌わないのは、病気によるものではなく、そのパフォーマンスを含めてこの曲で伝えたいことなのかもしれない。


この曲は、一聴してビルボードのヒットチャートを賑わしているような曲調にも聴こえるが、彼女の背景にあるものを思うと印象がガラリと変わって響いてくる。
「私は都合の良い女」
「ブランコのようにシャンデリアを揺らす私」

そんな歌詞のフレーズが、自己表現を他者に委ねることへの疑問と苦悩を投げかけている。
「1、2、3」で口に流し込む酒は…嫌なことを何も考えずに無理矢理行動にうつしている現実を表しているかのようだ。

1、2、3 ハイ、飲んで
1、2、3 ハイ、飲んで
1、2、3 ハイ、飲んで



【Sia(シーア)オフィシャルサイト・プロフィール】
http://www.sonymusic.co.jp/artist/sia/profile/

シーア『1000 Forms of Fear』

シーア『1000 Forms of Fear』

(2014/RCA)



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