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When You Wish upon a Star(星に願いを)〜ディズニー映画の劇中歌として生まれた世界で最も有名なスタンダードナンバー

2018.01.28

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星に願いをかけるとき
君が誰でも関係ないさ
心を込めて望むなら…
きっと願いは叶うはず


1937年、ウォルト・ディズニーは長編アニメ映画の一作目となる『白雪姫』を大ヒットさせた。
アメリカ中の子供達が次作を待ち望む中、3年後の 1940年に二作目『ピノキオ』が公開となる。
それは、イタリアの作家カルロ・コッローディの童話『ピノッキオの冒険』を映画化したもので、人間の魂を妖精に入れてもらったあやつり人形の物語だった。
映画の主題歌として製作されたこの「When You Wish upon a Star(星に願いを)」は、同年度の第13回アカデミー賞で歌曲賞を見事受賞した。
クレジットには作詞:ネッド・ワシントン、作曲:リー・ハーラインと記されている。
ロマンティックで夢見るような美しいこのメロディーを書いた作曲家のリーは、もともとロサンジェルスラジオ局のディレクターを務めていた人物だという。
今やスタンダードナンバーとして世界中で愛され、ジャンルの壁を超えて多くの歌手に歌われている名曲だが、この曲を最初に歌ったのはミズーリ州マリオン郡出身の歌手クリフ・エドワーズという男だった。
彼は物語に登場するコオロギ(ジミニー・クリケット)役の声を担当しており、劇中歌として同曲を披露している。
彼は“ウクレレ・アイク”というニックネームで愛されたウクレレ奏者でもあり、ボードビリアン、ジャズシンガー、声優という多彩な顔を持つエンターティナーだった。
クリフが使っていたウクレレの小さなソプラノモデルや、テナーモデルは当時の楽器市場でも大人気となり、アメリカでのウクレレの普及は彼の人気にあやかったものだったという。





曲の誕生から70年以上…長い歴史の中で、インストゥルメンタルも含め“星の数ほど”演奏されてきたこの曲。
中でも白眉と言えるのがサッチモことルイ・アームストロングによる歌唱だろう。
どこまでも純粋でシンプルなこの歌詞を噛みしめるようにして歌うサッチモの声を聴いていると、まるで自分が星空を眺めながら願い事をしているかのような気持ちになってくるから不思議だ。
サッチモの音楽を聴いて育ち、同じトランペッターとしてグラミー賞を受賞しているウィントン・マルサリスの言葉が印象的である。

「彼のボーカルはトランペットと同じで、すべてに“人柄”がにじみ出ている。聴いている自分が瞬時にしてその世界の住人になれるんだ。あたたかくて慈愛に満ちた声…彼が世界中の人から愛される理由がこの歌の中に詰まっている。」




<引用元・参考文献『ジャズマンが語るジャズ・スタンダード120』小川隆夫著/全音楽譜出版社>





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