いちどは あたしとしたいでしょ?
あの摩天楼の 最上階で
理性は ティッシュにくるんで
ゴミ箱の中へ 捨ててしまって
(「アンビエント・ドライヴァー2」より)
2004年からジャズ・ボーカリストとしてのキャリアを始動した青羊(あめ)が、歌のみならず、音楽をはじめ表現全般を具現化していくソロ・ユニットとして2010年に立ち上げた〈けもの〉。その名前には、「本能をカタチにすること」という意味が込められているのだという。
2011年にミニ・アルバム『けもののうた』をリリース。そして、2013年9月にサックス奏者・菊地成孔をプロデュースに迎えた初のフル・アルバム『LE KEMONO INTOXIQUE(ル・ケモノ・アントクシーク)』を発表した。本作で菊地はサウンド面でのプロデュースやサックスの演奏参加にとどまらず、ジャケットのアートワークやスタイリング、写真撮影など全面的にバックアップ。青羊というフレッシュな才能への思い入れの深さが窺える。
ジャズ・スタンダード「My Foolish Heart」のカバーで幕を開けるこのアルバム。ボーカルとピアノのみのシンプルなスタイルで、彼女の歌が持つ表現力の高さを見せつける名刺代わりの1曲。そして、2曲目「アンビエント・ドライヴァー2」以降からは、青羊という女性の内面を生々しく描いていく楽曲が畳みかけるように続いていく。エレクトリックピアノを多用したスタイリッシュでクールなサウンドは一聴すると耳馴染みがよいものだが、ジャズのフィールドで活躍する若きプレイヤー陣のスイッチが一度入ると、スリリングな応酬に興奮させられる。そこに加わる菊地のサックス。時に流麗に、時に凶暴に、時に郷愁を感じさせる菊地のプレイが、けものの音楽表現に一層の深みを与えている。
青羊の詞曲によるオリジナル・ナンバーを中心にジャズを基調にしたポップスを展開していく本作だが、菊地がトラックメイキングと作詞を手がけたポエトリーリーティングや、マイケル・ジャクソンの有名すぎるヒット曲「BEAT IT」をレゲエ・アレンジでカバーするなど、決して一口では言い表せないバックグラウンドを感じさせる。そうして多彩なアプローチの楽曲を次々に着こなしてはいくものの、やはり圧倒的な個性が際立ってしまう青羊のボーカル。少女のような初々しさも、ひやりとした妖艶さも、複雑に入り組んだおんなの心理も、すべてを内包したような彼女の歌は、聴きすすめるほどにズブズブと深みに陥ってしまう──決して座りのいいポップスには収まらない、けものの音楽。その中毒的な魅力に、多くの人たちが感染していくことだろう。
けもの official website
http://kemono.pupu.jp/
けもの『LE KEMONO INTOXIQUE』告知動画
けもの「フィッシュ京子ちゃんのテーマB」 MV
けもの「フィッシュ京子ちゃんのテーマA」 MV
Live Schedule
『けもの、内、殺される!?』
2014年10月31日(金)東京・新宿ピットイン
出演:けもの 青羊(vo),石田衛(p ), トオイダイスケ(g,vo), 織原良次(fb), 吉良創太(dr)
ゲスト:内橋和久(g)
KEMONO LIVE
2014年11月27日(木)神奈川・鎌倉 カフェ ヴィヴモン ディモンシュ
出演:けもの 青羊(vo),トオイダイスケ(key,vo), 織原良次(fb), 吉良創太(dr)
MILLIBAR・LIKKLE MAI presents 大忘年会ライブ〜ミリバール18周年記念スペシャル
2014年12月7日(日)東京・代官山LOOP
LIVE:Likkle Mai Band、けもの
Special Guest:こだま和文、千田けい子、大熊ワタル、こぐれみわぞう(シカラムータ)
DJ:Kenji Hasegawa
詳しくは けもの official website をご確認ください。