1970年、当時18歳だったポール・スタンレーは、商業デザイナーになるため通っていたニューヨークのハイスクール・オブ・ミュージック&アートを卒業する。その後、アートカレッジに進むも、美術に対する興味を失っていたため1週間で自主退学。その頃のポールはすでにこう断言していた。
「俺はロックスターになる!」
一方、ジーン・シモンズは20歳を迎え、1970年からリッチモンド・カレッジの教育課程で教員になるために学んでいた。この年、ジーンはそれまで参加してきたいくつかのバンドに見切りをつけ、音楽教師のブルック・オストランダーと共に、プロ契約を目指す新しいバンドWicked Lesterを結成する。
その新バンドにスタンレー・アイゼン(後のポール・スタンレー)が参加することとなる。彼らは1枚のアルバムをレコーディングしたが、レコード会社との契約がうまくいかず作品はお蔵入りとなった。
そして1972年、ジーンはポールと共にWicked Lesterを脱退し、翌1973年1月、彼らは新しいバンドKISSを結成。KISS誕生への一歩目を踏み出すこととなったこの時期、彼らはお互いに対してどんな印象を持ち、どんな出会いをしていたのだろうか?
当時、ポールは音楽で成功するための足掛かりとして、まずは本格的なバンドを結成して活動することを目標としていた。それまで組んでいたバンドのメンバーとは(プロを目指すという意味で)温度差を感じていた。
ある時、ベーシストを探すこととなり、当時のメンバーの紹介でジーン・クライン(後のジーン・シモンズ)と顔を合わせることとなった。ポールはその日のことをこんな風に語っている。
「身体がでかくて無愛想な男だったよ。長髪で二重顎の下までヒゲを生やしていた。オバーオールにサンダル履きで、決してお洒落とは言えない姿だった。出会った瞬間から俺達のことを音楽的に対等な相手として見なしていないことを露骨に示していたよ」
ジーンはポール達に自分が書いた曲のデモテープを数曲聴かせた。そして次にポールに対してこう言った。
「今度はお前の書いた曲も聴かせろよ!」
ポールはカセットデッキにテープをセットして、黙って再生ボタンを押した。スピーカーからは、ポールが書いた楽曲「Sunday Driver」(後にKISSで「Let Me Know」として発表される)が流れ始める。
腕組みをしながら曲に聴き入っていたジーンは、興奮気味にこんな言葉を放った。
「驚いたよ! レノン=マッカートニー、そして俺以外にもまともな曲を書ける奴がいたんだな!」
数日後、ポールのもとにジーンから一本の電話が入る。
「俺が新しく組んだバンドWicked Lesterのデモテープ録音でプレイしれくれないか?」
翌週、ポールはWicked Lesterがたむろしているメンバーの自宅を訪ねた。決して高級とは言えない自宅用の録音機材でレコーディングは行われた。
「俺達は眠ることなく集中したよ。大きな水パイプでマリファナを吸いながら、俺達は頭がぶっ飛んだ状態で録音を続けたんだ。ジーンは風変わりな曲をたくさん書いていた。あれは彼がイスラエルで生まれたハンガリー系ユダヤ人だったからなのか?」
一方、ポールはポーランドからニューヨークへ移ってきた移民の子だった。母方の一族はナチスの台頭に伴って、ベルリンからアムステルダムに逃げてきたユダヤ系の家系。
ポールとジーンは、お互いに出生や育った環境に複雑さを感じながらも、何よりも音楽の好みが似ていることで惹かれ合ったという。
「ジーンと一緒だとハーモニーがうまく響いたんだ。彼と一緒にバンドがやりたい!と思ったよ」(ポール・スタンレー)
「ポールとは出会った瞬間からウマがあった。俺たち二人の間には、後にKISSとなって花開くアイディアが閃光のようにひらめいていたんだ!」(ジーン・シモンズ)
<引用元・参考文献『ポール・スタンレー自伝 モンスター 仮面の告白』ポール・スタンレー(著)ティム・モア(著)増田勇一(監修)迫田はつみ(翻訳)/ シンコーミュージック>
<引用元・参考文献『KISS AND MAKE‐UP―ジーン・シモンズ自伝』ジーン・シモンズ(著)大谷淳(翻訳)/シンコーミュージック>
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