TAP the DAY

サム・クックの素晴らしさを発見した日本のミュージシャンたち

2014.12.11

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アメリカのローリングストーン誌で2014年に180人の著名人の投票により選出された「偉大なシンガー100人」で、サム・クックはジョン・レノンやボブ・ディランよりも上の4位にランクされている。

だが日本では長い間、その音楽も、人となりも、紹介されることが少なかった。
例えば1963年に出たレコードが当時の人気少女歌手、リトル・ペギー・マーチのB面だったことからもその扱いの軽さがわかる。

noname25リトル・ペギー・マーチ&サム・クック

1963年の4月に全米シングルチャートの第1位に輝いた史上最年少の少女、リトル・ペギー・マーチの「アイ・ウィル・フォロー・ヒム」がシングル盤のA面で、サムの「こんどの土曜日に恋人を」はB面のカップリング曲という扱いだったのだ。

次に出た「愛のゆく道(LOVE WILL FIND A WAY)」もまた、テレビ番組「ペリー・コモ・ショウ」で有名なポピュラー歌手、ペリー・コモのシングル盤のB面だった。

o0342033913047888511「アイ・ウィル・フォロー・ヒム」愛の湯汲み落ち

どちらも白人のシンガーの陰に隠れていたのは、今になってみれば何とも象徴的である。

担当者にしてみればヒットを見込めるレコードのB面を利用して、少しでも日の目を見るようにと考えた苦肉の策だったのかもしれない。でも言い換えれば、そのくらいにしか期待されていなかったということだ。

そしてサムは1964年12月11日、ロサンゼルスで不慮の死を遂げてしまう。

遺作となった「シェイク」は翌年にアメリカで大ヒットした。
B面の「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」も、最期のメッセージと受けとめられて広く浸透していった。
にもかかわらず日本では、サムの死も音楽も無視されたままだった。

その年はビートルズのレコードが日本で発売になり、それに続けとばかりローリングストーンズやアニマルズ、キンクス、デイブ・クラーク・ファイブなど英国のバンドが続々と紹介された。
しかも運が悪いことにベンチャーズ旋風が吹き荒れて、日本中で空前のエレキブームを巻き起こっていたのだった。

それからまもなくして、サムを師と仰いでいたオーティス・レディングに脚光があたり、そのカヴァーを通じて「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」や「ワンダフルワールド」のオリジナル・シンガーだったという認識が少しだけ広まった。

それが変わっていくのは70年代に入ってからで、大瀧詠一、RCサクセションの忌野清志郎、上田正樹とサウス・トゥ・サウスなどがサムの素晴らしさに気がついて、自らの創作やライブでエッセンスを受け継いでからのことだ。

そして1985年、マイアミのハーレム・スクエア・クラブという黒人コミュニティーで、1963年の1月にサムが歌ったライブ音源が世に出ることになった。

zgdxutxxbg12815サム・クック ハーレム

刺激が強すぎて商品に向かないと、当時のRCAは発売を自粛していたというアルバムだ。しかし、そのレコードを聴いて多くの音楽ファンやミュージシャンは、初めてサム・クックの魅力を発見することになる。

NHKFMで「サウンドストリート」というDJ番組を持っていた山下達郎は、届けられたレコードを視聴して驚き、急遽予定を変更してサムの特集を組んだ。

「85年に私はNHKでサウンドストリートという番組をやっておりましたが、その時にこのアルバム、丁度出ましてですね、全曲ご紹介した記憶があります。
このアルバムは一曲聴くという事ができません。
特にB面はですね、ずーっと通して思わず聴いてしまう、それほど引き込まれる作品でございます。」


ラジオから流れてきたのはタフで力強く、どこまでもソウルフルな歌声だった。それは多くのリスナーに強い衝撃を与えた。
山下達郎がラジオから全曲オンエアしてくれたことで、それまでの日本人がサム・クックに抱いていたイメージ、白人受けする甘い声のポップス歌手は完全にひっくり返った。


たった1枚のレコード、『ハーレム・スクエアー・クラブ 1963』がサムへの認識を一変させたのである。

21世紀の日本ではサム・クックへの評価がどうなっているのか、一例を紹介したい。
全曲英語で切れ味の良いロック・ナンバーを繰り出すバンドのTHE BAWDIESが、”無人島 ~俺の10枚~ 【THE BAWDIES編】”というHMV ONLINEの企画で、真っ先にこのライブ盤を挙げて熱いコメントを寄せている。(注)

とにかく世界中の皆様に聴いて頂きたい一枚です!
すでにサム・ クックを 知っている方も、もしこの一枚をまだ聴いていないのなら、絶対聴いて下 さい!これが多くのソウルシンガーがリスペクトした本当の彼の姿です! 最高に熱い迫力のシャウト!そしてオーディエンスの熱気からは生きる喜 びを与えてもらえます!無人島には是非ともご一緒したい一枚です!


サム・クックの「TWISTIN’ THE NIGHT AWAY」が国内でCD化されてないことを知って、”それでは俺がカヴァーを!”とばかりにウルフルズのトータス松本は、リスペクトの気持ちを込めて「TWISTIN’ THE NIGHT AWAY」をまるごとカヴァーした。

51hCp-A77cL._SX425_ トータス松本 サム・クック

その意気込みが通じたのか、レコード会社もようやくサムのオリジナル・アルバムを一挙に9枚出したが、これまた日本で洋楽チャートを賑わせた。

いつまでも色褪せないばかりか、時間を置いたことで余分な情報や先入観なく、純粋に音楽として捉えられたことから、これからも日本ではサム・クックの発見者や継承者が増えていくに違いない。


(注)HMV ONLINE 無人島 ~俺の10枚~ 【THE BAWDIES編】http://www.hmv.co.jp/news/article/1003090069/

サム・クック『ハーレム・スクエア・クラブ1963』
SMJ

トータス松本『Twistin’ The Night Away』
ワーナーミュージック・ジャパン




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