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ハリー・チェイピンを偲んで〜慈善活動に尽力した“歌うストーリーテラー”の足跡と功績

2020.07.16

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1981年7月16日、完成度の高い歌詞で“ストーリーテラー”とも呼ばれたアメリカのシンガーソングライター、ハリー・チェイピン(享年38)が突然この世を去った。
チャリティーコンサートを行う為にマンハッタンへ車で向かう途中、
ニューヨーク近郊の高速道路(ロング・アイランド・エクスプレスウェイ)で交通事故に遭い、ヘリコプターで病院に運ばれ蘇生が試みられたが…彼の意識が戻ることはなかった。
彼は、飢餓と貧困の撲滅を目的に『World Hunger Year(WHY) 』という慈善団体を設立した人物でもある。
環境問題にも取り組み、様々なチャリティーを行いながらコンサートの売上げを寄付するなど、その活動を通じて常に政治的なメッセージを発信し続けていた。
彼の死後、その慈善活動は引き継がれ『ハリー・チェイピン記念基金』が設立されるまでとなった。
その活動に興味を持ったハリー・ベラフォンテ(アメリカを代表する音楽家・俳優・社会活動家)が提唱者の一人となり、アフリカ飢餓救済のためのベネフィットソング「We Are The World」へと繋がっていったのだ。



1972年(当時30歳)に1stアルバム『Heads & Tales』(エレクトラ)でデビューした彼は、ジェイムズ・テイラー、エルトン・ジョン、キャロル・キング、ギルバート・オサリバン、ビリー・ジョエルなど1960年代後半から頭角を現し始めたシンガーソングライター達の一歩後ろを歩くように登場したアーティストである。
二十代の頃には、ボクシングを題材にしたドキュメンタリー映画『Legendary Champions』を監督してアカデミー賞候補になったり、映画『Blue Water, White Death(青い海と白い鮫)』のサウンドトラックを担当したりもしている。
デビュー後の1970年代半ばからは、ソングライターとしてアメリカ国内において注目を集める存在となった。
1stアルバムからシングルカットした「Taxi」がボストンのラジオで頻繁に流されるようになり、ローカルヒットを記録。
1973年に発表した3rdアルバム『Short Stories』では、物語性のある楽曲(歌詞)が高い評価を得る。
1974年には4thアルバム『Verities & Balderdash(真実と戯言)』からのシングルカット曲「Cat’s in the Cradle(ゆりかごの猫)」で遂に全米チャート1位を獲得する。
アメリカで作品がナンバー1ヒットとなり32歳の若さで彼は富裕層となるべく印税を手にする。
しかし、彼は入ってくる印税のほとんどを寄付と福祉にあてた。
翌1975年にはWHY(World Hunger Year)という慈善団体を設立し、飢餓と貧困の撲滅をめざす活動をスタートさせる。  
彼の死後、妻サンディーはこう語っている。

「ハリーは、貯蓄というものに全く関心がありませんでした。お金は人々のためのものだというのが口ぐせで、手元に残そうとはしませんでした。」

その後、彼が音楽活動を通じて寄附にまわした金額は総計300万ドルを超えたという。
全米1位を記録した代表曲「Cat’s in the Cradle(ゆりかごの猫)」は、彼が31歳の時に妻のサンディーとの共作したものだった。
この歌のサビでは、詩的なメタファーを用いながら“すれちがう親子”の会話がこんな風に描かれている。

ゆりかごの中の猫と、銀のスプーン
小さな男の子の憂鬱と、月に住んでいる男
パパはいつお家に帰ってくるの?坊や、いつ帰れるかわからないんだ
だけど、帰ったら一緒にいよう
その時は楽しい時間になるぞ


“the silver spoon(銀のスプーン)”は、「良い家庭に生まれてきた」ということを表す言葉。
“Little boy blue(小さな男の子の憂鬱)”は、イギリスの伝承童謡集『マザー・グース』の唄にでてくる少年のこと。
そして“the man in the moon(月に住んでいる男)” も、同じ童話に登場する人物のことらしい。
彼と妻のサンディーは、この歌詞にどんな想いを込めたのだろう?
息子の誕生、成長、巣立ち、そして歳老いた自分が“あの日の自分”と重ね合わせる息子の姿。
教訓と風刺を織り込んだ、実によく出来た“童話”のような歌である。





こちらのコラムの「書き手」である佐々木モトアキの音楽活動情報です♪
宜しくお願い致します。


新作ミニアルバム『You』のタイトルナンバー「You」のミュージックビデオです♪
映像編集、ポートレート(写真)撮影共に、佐々木モトアキ本人が手掛けております。
とてもシンプルな技法ですが、何よりも登場する皆さんの表情が素敵です✨
人が“目を閉じている”表情。
その“瞼(まぶた)に浮かんでいる”誰かの顔。
繋がってゆく“一人ひとりの想い”が、100通りの、いや1000通りのドラマを描いてくれています。

「どんなに離れていても 何度生まれ変わっても 僕らは巡り逢う」

2020年4月22日リリース!!!
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12572525158.html

唄うたい佐々木モトアキの新曲「You」、山善の秀作「一本の赤い薔薇」のカヴァーを含む珠玉の作品集。
遠く離れて暮らす大切な人、男の友情、忘れられない場面、誰かの溜め息、出逢えた奇蹟、長く曲がりくねった道、喜びと悲しみ…どうしようもないこと。
7篇の歌物語に心を重ねて、あなたの大切な人(You)の名前を呼んでみてください。




【佐々木モトアキ独り唄いTOUR“歌ものがたり2020”春夏】

■7月18日(土)岩手(二戸) HOUSE OF PICNIC
■7月19日(日)秋田(能代) ハックルベリー 
■8月1日(土)群馬(渋川) Casa Midori
■8月22日(土)大阪 新世界ヤンチャーズ
■8月23日(日)徳島 デラシネ 
■8月24日(月)東広島 pasta amare
■8月28日(金)福岡 Bar KINGBEE
■8月29日(土)大牟田 陽炎
■8月30日(日)佐賀 RAG-G〜Que Sera ,Sera Vol.3〜

↓チケットご予約&公演詳細はこちら
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12576468028.html


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