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男たちのバラード②〜あの時孤独な心を救ってくれた“至上の一曲”たち

2019.12.10

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傷つき疲れ果てた夜。屈辱に覆われた夜。孤独に耐え抜いた夜。辛い過去に囚われた夜。悲しみに暮れた夜。一人で泣いた夜。そして静かに復活を誓った夜。あの時救ってくれた音楽。あの時人知れず耳を傾けた自分だけの音楽。アーティストたちも同じ風景を見つめていた。題して「男たちのバラード」。この至上の一曲たちを男たちに捧ぐ。(選曲/中野充浩)


ローリング・ストーンズ「If You Really Want to Be My Friend」
1974年の『It’s Only Rock ‘n Roll』に収録された心に染みる1曲。ストーンズのアルバムには必ず1曲はバラードが入っていて、ピアノバラードやカントリーバラードなどそのどれもが表情豊か。これはストーンズ流の至上のソウルバラードであり、孤独な夜を乗り越えるための歌だ。何度聴いても胸が熱くなる。決してベスト盤には入らないが、こんな名曲を絶対に聴き逃してはならない。



ブルース・スプリングスティーン「Racing in the Street」
1978年の『Darkness on the Edge of Town』に収録された心に染みる1曲。この曲を初めて聴いた10代の夜。思い浮かべたのは寂れた町に生きる一人の男の姿だった。夢と希望に満ち溢れた時代が過ぎ去り、今では妻子と家庭を持ち、厳しい現実と向き合いながらループする毎日を送る。それでもいつかは。郊外の労働者の心の風景を描かせたら、ボスの右に出る者はいない。


ジョン・レノン「Stand By Me」
1975年の『Rock ‘n’ Roll』に収録された心に染みる1曲。自分を見失いそうになったら自らのルーツに戻ること。原点回帰する男は美しい。誰もが知る名曲のカバーだが、ジョンの歌声を通じて聴くと、悲しみを直視し打ちのめされながらも、それでも前を向いて生きていこうという力を与えてくれる。こういう曲を聴くたびにむしょうに嬉しくなる。


ボブ・シーガー&ザ・シルバー・ブレット・バンド「The Famous Final Scene」
1978年の『Stranger in Town』に収録された心に染みる1曲。ボブ・シーガーの曲から思い浮かべるのは、ハイウェイ、郊外の町、酒場やトラック、デニムを履いた人々、ダイナーやモーテルの灯り。日本の都市部で聴くと馴染まないが、なぜか郊外や田舎町で流すと心情が一致する。語るに足るささやかな人生。こういう感覚をいつまでも忘れたくない。


ウィリー・ネルソン「For the Good Times」
1979年の『Sings Kristofferson』に収録された心に染みる1曲。アメリカ音楽界のリビング・レジェンドは優れたソングライターであると同時に、埋もれた曲を発掘する知的良心に富んだシンガーであり続ける。70年代のアウトロー時代にウェイロン・ジェニングスと歌った名曲の数々も聴き手の胸を熱くするが、今回はクリス・クリストファーソンの名曲を。ウィリーが歌うと、涙の川が見えてくる。


ビーチ・ボーイズ「Disney Girls (1957)」
1971年の『Surf’s Up』に収録された心に染みる1曲。ビーチ・ボーイズほど60年代と70年代の音風景が異なるバンドも珍しい。分かりやすく例えるなら陽と陰。光と影。暗い日々から想う圧倒的なノルタルジー。汚れとは無縁だったイノセンス。現実の中に突如として訪れるグッド・オールド・デイズ。名曲だ。


J.D.サウザー「The Last in Love」
1979年の『You’re Only Lonely』に収録された心に染みる1曲。「君は孤独なんだね」というタイトル曲が有名だが、アルバム3曲目のこの曲も切ない。グレン・フライとの共作で「愛の終わり」が描かれる。深夜のファミレスで一つの愛を失いそうになっていた時、普段なら流れることなどありえないこの曲が店内の有線放送から聴こえてきた。思わず息をのんで聴き入った。


チャーリー・セクストン「Regular Grind」
2005年の『Cruel and Gentle Things』に収録された心に染みる1曲。このアルバムを聴いた時、一人の復活する男のドラマが見えた。ブルーズに取り憑かれた少年がアイドルとして売り出される悲劇。そして心機一転、本物の音楽を追求するものの、代償として明日の金を心配する日々。過去ではなく、未来を見つめた先に生まれた新しい力と決意。ため息をついたっていい。でも立ち上がれ。チャーリーは教えてくれる。早く新作が聴きたい。

パート1はこちらから。

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