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オノ・ヨーコ少女時代〜大財閥のお嬢様が受けた英才教育

2019.12.08

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1933年2月18日AM8:30、安田財閥が所有する東京の大きな屋敷で彼女は雪の降る朝に生まれたという。
小野英輔・磯子の間に生まれた三人の姉弟の長女だった。
父親は日本興業銀行総裁を務めた小野英二郎の子であり、ピアニストから銀行員に転じ、彼女が生まれた時は横浜正金銀行のサンフランシスコ支店に勤務していた。
母親の祖父は安田財閥の創始者・安田善次郎だった。
安田財閥といえば、金融部門で他の財閥の追随を許さないほど潤沢な金融資本をもつ日本四大財閥の一つ。
つまり彼女は、安田財閥直系のお嬢様だった。

「魚座生まれの私に、両親は“海の子”を意味する“洋子”という名前をつけました。」


幼児期に父親が遠く離れた存在だった上、母性よりも義務感に満ち溢れた母親は、お行儀よく躾けられた娘(彼女)に対してめったに感情を表したりスキンシップをはかろうとしなかった。
母親は家事に加えて、娘のオムツ替えや授乳など日常的な育児を、30人前後いた使用人に任せきりにした。
彼女たちは宮廷の使用人と同じ作法・習慣を身につけており、主人(つまり彼女の母親)がお目見えする際は、ひざまずいてお辞儀をしたという。
母親はオムツ交換をしないくせに、娘に対して異常なくらい潔癖な生活習慣を要求した。
お付きの人には必ずアルコールを浸した脱脂綿を持ち歩かせ、浮浪児がいそうな公の場では、娘(洋子)が触れるだろうと思われる場所を徹底的に消毒させたという。

「自分が孤独な子供だとは思いませんでした。だってそんな生活しか知らなかったんですから。」


彼女が生まれる4年前に起こったウォール街崩壊の後遺症で、アメリカでは数多くの企業が破綻し、大量の失業者が生まれた時代だった。
その反面、日本では第一次世界大戦以来の急速な産業発展のおかげで、諸外国よりもましな状況で1930年代を終えることになる。
彼女が3歳を迎えた1936年、母親は子供たちを連れて夫の暮らすサンフランシスコへ転居したが、2年後には日本へ帰国し、安田家の鎌倉の別荘で暮らしたという。


サンフランシスコで暮らした短い期間、彼女は父親の勧めでピアノを習っていた。
熱心に練習した彼女は、日本に帰国する頃には、4歳にして訪問客をなど前にして演奏を披露できる腕前になっていたという。
母親はまた別の方面でも彼女の才能を伸ばそうとした。
1939年、6歳になった彼女を明仁皇太子殿下(のちの平成天皇)も在籍していた学習院に入学する。
母親の期待を一身に背負って、彼女はそこで勉強はもとより、英語、タップダンス、シェイクスピアなどの劇作を学んだ。
1941年、真珠湾攻撃を前に世の中の緊張が高まってきた頃…
母親は再び子供たちを連れて夫の転勤先であるニューヨークに転居する。
当時8歳だった彼女は、ロングアイランドのパブリックスクールに編入。
そして日本が敗戦した後、一家は帰国をすることとなる。
戦後の混乱の中、彼女は転校を繰り返す激動の日々を送った。
啓明学園初等学校→青南小学校→学習院女子中・高等科→そして学習院大学の哲学科に入学。
進駐軍が街を闊歩し、ファッション、映画、飲み物、食べ物など、様々なアメリカ文化が押し寄せてきた時代、彼女が時々お茶を飲みに行っていた喫茶店では、インクスポッツなどのポップスが流れていたという。



1953年、20歳になった彼女は再び家族と共に父親の赴任先であるニューヨーク郊外のスカーズデールに移り住み、米国一お金のかかる大学としても有名なサラ・ローレンス大学で音楽と詩を学ぶこととなる。
幼い頃から英才教育を受け続けてきた彼女は、大学講師たちが驚くほどに「芸術」「哲学」「歴史」「伝統」に精通していた。
音楽に関してはクラシックを好み。特にモーツァルトを敬愛していたという。
そんな中、戦後一気に広まったポップスには、彼女はあまり興味を示さなかった。
ビルボードのレコード売り上げ部門にチャートインした最新のヒット曲「Here In My Heart」や「Mister Sandman」がラジオから流れ、他の生徒たちが心ときめかしていても、彼女は軽くあしらっていたという。



当時、若者たちを中心に音楽的な革命を起こしつつあったロックンロールに関しても、彼女はとても冷静に見ていた。

「私を取り囲んでいた前衛的な環境に、たいした共感も興味も持ちませんでした。どちらかといえばその逆で、ロックンロールの一部になんかなるものか!と強いうぬぼれみたいな、ものがありました。なぜならロックンロールはあまりにも商業的でしたから。」


<引用元・参考文献『オノ・ヨーコという生き方 WOMAN』アラン・クレイソン(著)ロブ・ジョンソン(著)バーブ・ジュンガー(著)上原直子(翻訳)/ブルースインターアクションズ>





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