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ジョー・ペリー少年時代②〜ようやく手に入れたアコースティックギター、ビートルズの衝撃

2019.01.06

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「50年代から60年代に時代が移る頃、俺はロックンロールとリズム&ブルースに膝までどっぷり浸かっていた。ラジオにかじりついてはチャック・ベリーの演奏とロイ・オービソンの歌を聴いていたよ。」


10歳を過ぎた頃には、彼はもうエレキギターの虜となっていた。
チャック・ベリーに憧れ、とにかくギターを手に入れることで頭がいっぱいだったという。



「親は俺にダンスを習わせたがっていたよ。まだワルツとかフォックストロット(社交ダンス)が主流だった時代、俺にとってダンス教室なんか悪夢としか言いようがなかった。無理矢理通わされた時期もあったよ。そして親がすすめるままにクラリネットまで買い与えられて…もう最悪だったよ。」


彼は数週間でクラリネットを放り出して、両親に直談判した。

「ギターを買ってくれよ!お願いだから!どうしてもギターが必要なんだ!」


ついに両親が折れた。
ある日、彼の家に梱包されたギターが届いた。
プレゼントされた楽器は、シルバートーンの学生用モデルで、価格は12ドル95セントだった。
ギターと一緒に赤白青のストラップ、イラストが描かれた簡単なマニュアル、取扱説明の45回転レコードが付属品として付いていた。

「心臓が狂ったように暴れだすのを感じたよ。左利きの俺は、ごく自然に右手でネックを持って左手でかき鳴らしてみたんだ。すぐに間違いだと気づいて逆に持ち替えたんだ(笑)利き手が逆だろうが何だろうが、俺はベーシックなコード進行を徐々に覚えていったよ。だんだんとポップソングに合わせて弾けるようになっていったんだ。」


こうして幕を開けた彼のギター人生だったが…程なくして不運な出来事が起きてしまう。
ある日、シルバートーンのギターを壁に立てかけた状態で、彼は妹と部屋で鬼ごっこをしている最中に、うっかり倒してしまったのだ。
ヘッドが折れてしまい、ギターはそのままクローゼット行きとなった。

「ショックだったよ…。それから一年近くそのまま放っておいた。ザ・ビートルズが登場するまでは!そう彼らの人気に火がついたのは1963年。翌年の2月にエド・サリヴァン・ショーに登場した彼らは、とにかく自由奔放なエネルギーに満ち溢れていた。彼らの生み出すリズムが心の奥に封じ込められていた“性”を目覚めさせたんだ!13歳だった俺の股間を直撃した!セックスとロックミュージックは切っても切れないものだってことがわかったんだ!」



「一晩で夢中になったよ!早速レコードを手に入れて45回転プレイヤーで“She Loves You”を大音量で聴いた。“ボリュームを下げなさい!”と叱られることはあったけれど“聴いちゃいけない”とは一度も言われなかったんだ。たぶん両親は二人ともビートルズを好きだったんだろうな。だいぶあとになっておふくろが教えてくれたんだけど、父親は“Hey Jude”が好きだったらしい。」



ビートルズに刺激を受けた彼は、壊れたギターを接着剤でくっつけて修理して欲しいと父親に頼んだ。
とりあえずは、それで凌いでいたが…彼の中で今度は“上達したい”という欲が生まれてきたという。

「ちゃんとレッスンを受けて上手くなって、もっといいギターが欲しい!と父親に主張してみたところ、意外にもすぐにOKをもらえたんだ。だけど、買ってもらえたギターは、エレキではなくアコースティックだった。父親にしてみれば、巷で益々盛り上がってきているギンギンのエレキサウンド=不良カルチャーから息子を守ろうという手段だったんだ。バイクやタトゥー、そしてロックの流行は、上昇志向の高いうちの親にとっては許しがたいものだった。」



<引用元・参考文献『ジョー・ペリー自伝~アロスミスと俺の人生~』ジョー・ペリー (著), デヴィッド・リッツ (著), 細川真平 (監修), 森幸子 (翻訳), 前むつみ (翻訳), 渡部潮美 (翻訳), 久保田祐子 (翻訳), 木戸敦子 (翻訳)/ ヤマハミュージックメディア>


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