様々な街・都市を舞台に紡がれた魅力的な曲をご紹介するコーナー<街の歌>が今回ピックアップするのは、“ロックンロールの創始者の一人”と崇められるチャック・ベリーの名曲「Memphis Tennessee」。
この歌は、1959年にチャック・ベリーが33歳の時に発表したシングル「Back in the USA」のB面曲として発表された。
米国テネシー州にあるメンフィスと言えば、あのロックンロールの聖地“サン・レコード”を生んだ場所であり、エルヴィス・プレスリーが住んでいた街で、古くはブルース発祥の地。
この街名と州名を並べただけの曲タイトル。日本でいえば、さながら「博多九州」みたいなものだろう。
さて「Memphis Tennessee」と言えば、デビュー前のビートルズが1962年1月にデッカレコードのオーディションに落ちた時の音源の1曲としても有名である。
歴史に“たられば”はないが、もしもそのタイミングで彼らがデッカレコードのオーディションに受かっていたら…ビートルズはジョージ・マーティンとも出会うことなく違う運命を辿っていたのだろう。
日本でチャック・ベリーの名前が知られるようになるのは、ビートルズが日本レコードデビューした1964年以降だった。つまり、「Rock and Roll Music」や「Roll Over Beethoven」がビートルズの公式アルバムでカヴァーされるまで、“ロックンロールの神様”は日本では無名だったのだ。
この「Memphis Tennessee」は、ビートルズの公式アルバムに収録されていなかったので、日本のキャロルが1973年3月にリリースしたデビューアルバム『ルイジアンナ』のB面でカヴァーするまで、一部の洋楽ファン以外の日本人にはあまり知られていなかった楽曲である。
タイトルからして“ご当地ソング”なのかと思いきや…実は驚きの展開(オチ)がある歌なのだ。では、いったいどんな内容の歌詞なのだろう?
時代は1950年代の末。長距離電話をかけるには、電話交換手(オペレーター)に申し込んで相手につないでもらわなければならなかった。まず“長距離電話のオペレーター”という、めったなことでは歌の登場人物に出てこない存在に冒頭から気をとられてしまう。
長距離電話で意中の女性(マリー)に電話をかけようにも番号がわからないので、交換手に電話をするわけだが、変な男だと思われているのか?なかなか教えてもらえない。そこで男はマリーの暮している場所や、今はなかなか逢える状況ではないことなど“込み入った事情”を説明しだすのだが……
そう、これは最後の最後にマリーが“6歳の愛娘”というオチで終わる、ちょっとした小咄(こばなし)のような歌なのだ。
この歌がリリースされた1959年の時点で、チャック・ベリーは離婚もしていなかったし、メンフィスに住んだことなど一度もなかったというから面白い。
実体験に基づいているのか? 彼が作り上げたフィクションなのか? その歌詞に登場する主人公に気持ちを重ねてみると…どうにも切ない気持ちになってしまう。
現在、日本は3組に1組が離婚しているという。この半世紀以上も前にアメリカで生まれた歌が、遠い昔の“作り話”として聴こえるか? はたまたリアルに聴こえるか? いつの世もきっと同じような気持ちの父親や母親はいるのだろう。夫婦にも親子にも…色んな事情があるものだ。
ベスト・オブ・チャック・ベリー
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