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スーマー

2014.08.04

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変わり果てたあの風景は 君の歌の中で生きる
屋根の上のミンストレルは 夜空の月に歌う
(「ミンストレル」より)



ミンストレルというと、19世紀アメリカの大衆芸能〈ミンストレル・ショー〉を思い出すが、もともとは中世ヨーロッパの宮廷に使えた職業芸人や吟遊詩人を指す言葉で、現在では一般的に吟遊詩人を表す言葉として使われるという。

2001年頃から、ギターやバンジョーを抱えた〈弾き語り〉として活動をはじめた、スーマー。自らをシンガー・ソングライターではなく〈弾き語り〉と名乗るのは、自作の曲のみならず、作者不明の古い楽曲や、時を重ねて歌い継がれてきた名曲たちも、自分の歌のように歌い継いでいくことに大切にしているからだとか。そんな彼が、ロンサム・ストリングスなどで活躍するギタリスト、桜井芳樹をプロデュースに迎えたファースト・ソロ・アルバムが『ミンストレル』だ。

耳にすっと沁み入るようにあたたかく滋味に富むスーマーの歌声と、やさしく爪弾かれるアコースティックギターとバンジョー。そこに、桜井芳樹によるざらっとした肌触りのエレキギターの乾ききった音色が加わることで、楽曲のバックグラウンドに潜む様々なブルーズが燻し出されるようで、スーマーの歌により深い味わいが加わる。二人でのライブ活動も多く行ってきたというスーマーと桜井芳樹の演奏を基調に、KIRINJIやリトル・テンポでも活躍する田村玄一(ペダルスティール)、千ヶ崎学(コントラバス)、原さとし(バンジョー)といったロンサム・ストリングスの盟友たちや、ドラマーの椎野恭一、中村まり、パイレーツ・カヌー、栗コーダーカルテットのメンバーら、多くのミュージシャンたちがレコーディング・セッションに参加し、彩りを添えている。

スーマーの詞曲によるオリジナル曲に加え、「にぎわい」(浅川マキ)、「死んだ男の残したものは」(谷川俊太郎・作詞/武満徹・作曲)、「Goodbye Jacquline」(パイレーツ・カヌー)など、新旧の楽曲のカバーもあわせて収録。オリジナルもカバー曲も、スーマーの〈弾き語り〉というフィルターを通すことで、時代を超えた感覚をもって、楽曲の本質に触れられるように聴こえてくるのが興味深い。それは、まるで放浪を続けながら、人々に物語や史実を伝えていった吟遊詩人たちのアプローチと通じる。

バンジョーを抱えた現代のミンストレルは、これからの時代に何を見つめ、何を歌い継いでいくのか──そんな想いを馳せながら、スーマーの歌声にいつまでも耳を傾けていたくなる。


minstrel_sleeve

スーマー
『ミンストレル』

(Minstrel Songs/メタ・カンパニー)


スーマー『ミンストレル』は、OTOTOYにてハイレゾ音源配信中。
*リンク先でアルバム全曲の試聴も可能です。


スーマー official website
http://suemarr.com/

スーマー「ミンストレル」 Live
スーマー&桜井芳樹「雨がひらひら」 Live
スーマー&桜井芳樹 『ミンストレル』レコーディング

Live Schedule
8月5日(火)東京・阿佐ヶ谷 SOUL玉TOKYO w/桜井芳樹、千ヶ崎学
8月7日(木)埼玉・北浦和 クークーバード w/山口敦子
8月10日(日)神奈川・白楽 Sammy’s
8月16日(土)東京・青山CAY「Highway 246 Revisited vol.2」 w/中村まり、パイレーツ・カヌー、桜井芳樹
8月19日(火)神奈川・東白楽 BCBG w/早健HAYAKEN(from仙台)
8月22日(金)石川・金沢 JealousGuy w/W.C.カラス
8月23日(土)富山・富山 nolla cafe w/W.C.カラス
8月24日(日)富山・高岡 casa de la musica w/W.C.カラス
8月26日(火)東京・吉祥寺 ハバナムーン w/桜井芳樹
8月29日(金)東京・新高円寺 STAX FRED

詳細は スーマーofficial website にて

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