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ピート・シーガーからバーズへ、繰り返される旧約聖書の一節

2016.08.18

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 すべての物事には(ターン、ターン、ターン)
 季節と(ターン、ターン、ターン)
 天の下では、あらゆる目的のために
 時が存在するのだ

 旧約聖書の中のひとつ「伝道の書(コヘレトの言葉)」3章の一節にメロディーをつけたのは、ピート・シーガー。そしてピートが書いたメロディをカラフルなサウンドと鮮やかなコーラスで再現してみせたのが、バーズの「ターン、ターン、ターン」である。

 ボブ・ディランの「ミスター・タンブリンマン」のカバーでデビューしたバーズ・サウンドの特徴は、何といってもロジャー・マッギンの弾く12弦リッケンバッカーの音色だった。
ロジャーがビートルズの映画の中でジョージ・ハリスンが弾くのを見て、手に入れたギターだ。


 生まれる時があり、死ぬ時がある
 植える時があり、刈り取る時がある
 殺してしまう時があり、癒す時がある
 笑う時があり、泣く時がある

 歌詞はそう続く。
 そして歌はまた、冒頭部分に戻っていく。
 そこで「ターン、ターン、ターン」というコーラスが効いてくるのである。
 ターン。季節は、時は巡るのである。


 手に入れる時があり、失う時がある
 引き裂かれる時があり、繕う時がある
 愛するための時があり、憎しむための時がある。。。

 この「ターン、ターン、ターン」を書いた頃、作者のピート・シーガーは音楽出版社の担当からこんな手紙を受け取っていた。

「ピート、プロテスト・ソングばかり書いてちゃ、売れるわけがない」
 それは何十回と聞いてきた台詞だった。
「なら、誰か別の奴のところに行くことだな」
 そのたびごとに、ピートはそう答えていた。

 何十回、何百回と繰り返される。。。
 ターン。。。


 愛するための時があり、憎しむための時がある
 戦争の時があり、平和な時がある
 抱擁する時があり
 抱擁を拒む時がある

 ピートは十数分でこのメロディを書き上げている。だが彼は、自分がプロテスト・ソングの歌い手だということを忘れたわけではなかった。


 平和のための時
 それはまだ遅すぎではないのだと
 私は声を大にして言うのだ

 聖書にはない歌詞を、彼は最後に付け加えたのである。



 この曲が書かれた1962年、最初にカバーしたのは、フォーク・グループのライムライターズだった。そしてそのレコーディングのバック・ミュージシャンのひとりが、ロジャー・マッギンだったのである。

 ピートはバーズのバージョンを絶賛している。

「気に入ったよ。あの鐘の音のようなギターの音がね」




ザ・バーズ 『ターン・ターン・ターン』
SMJ

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