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グラム・パーソンズの魂が向かった場所

2018.09.20

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1973年9月20日。
 バーズのギタリスト、グラム・パーソンズの遺体が忽然と姿を消した。棺に入れられたパーソンズの遺体は、ロスの国際空港から彼の親族が暮らすニューオリンズに向かうことになっていた。

 カントリー・ロックの伝説ともなったグラム・パーソンズがジョシュア・ツリーのモーテル、ジョシュア・ツリー・インにチェックインしたのは、9月18日と記録されている。ジョシュア・ツリーはロスの空港から200マイルほど東に行ったところにある国立公園で、その面積は東京ドームの1.5倍ほどある(国立公園に制定されたのは、パーソンズの死後、1994年のことだ)。
 そこには、山が、砂漠が、自然の庭がある。そしてモハーヴェ砂漠には、ジョシュア・ツリーが生息している。そして巨岩で有名なこの地は、ロッククライミングとスクランブリングの聖地とされていた。

 グラム・パーソンズはロッククライミングを愛していた。そして2作目となるソロ・アルバム『グリーヴァンス・エンジェル』の制作を終えた彼は、リラックスしたかったのだろう。ロッククライミングを楽しみ、、、酒を飲んだ。酒を飲み、モルヒネを打った。9月19日、彼はモーテルで、帰らぬ人となっていた。

 そのパーソンズが収まった棺を盗んだ男たちは、霊柩車に棺を乗せると、東に向かい、途中、バーで車を停めている。
 ひとりは、フィル・カウフマン。もうひとりは、マイケル・マーティンといった。ふたりは、パーソンズの友人であり、カウフマンはロード・マネージャーであった。

 バーでふたりは、献杯を交わした。
 そして、故人が生前語っていた言葉を、実行に移すことをもう一度、確認しあった。ふたりは、ジョシュア・ツリーへと向かった。

 ジョシュア・ツリー国立公園の中、車は、巨大な岩の前で停まった。岩の上には、もうひとつ、ちょこんと小さな岩が乗っている。その岩が帽子のように見えることから、そこはキャップ・ロックと呼ばれていた。

「もし、俺が死んだら。。。」

 グラン・パーソンズは、そう言ったのだと、カウフマンは供述している。

「キャップロックで俺を焼いてくれ。。。」

 キャップ・ロック。
 そこはグラン・パーソンズが生前、盟友キース・リチャーズと一晩、過ごした場所だった。ふたりは、酒を飲み、歌を口ずさみ、幻覚剤ペヨーテをキメた場所だった。

 以来、その場所は伝説となった。
 その場所では、グラン・パーソンズの霊が現れ、ギターを奏で、歌を口ずさむというのである。



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