TAP the SCENE

ザ・エージェント〜ある日突然会社を解雇されたエリートが生きる歓びを感じて口ずさんだ歌とは?

2015.12.13

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もしも今勤めている会社を突然解雇されたら、あなたならどうするか?
もしも高給な仕事に就き、毎日金儲けやビジネスのことばかり考えていたのに、ある日突然すべてを奪われてしまったら?
付き合っている異性にどう説明する? 相手は君のことをクールに稼ぐ人間だと思っている。
周囲の友人や仲間たちにどう顔向けする? みんなは君のことを人生のパーティを知り尽くした愉快な人間だと思っている。どうするか?

トム・クルーズがプロスポーツ選手のエージェントに扮した『ザ・エージェント』(Jerry Maguire/1996)は、まさにそんな状況に追い込まれた主人公が、逆境の中でもがき苦しみながら、愛ある人々との関わりや支えを通じて長らく忘れていた大切な世界や時間、そして生きる歓びを取り戻していくという物語。観終わった時、真っすぐな勇気と強い希望で心を満たしてくれる温かい人間ドラマだ。

この映画には見どころが実に多い。
大手スポーツエージェンシーの稼ぎ頭として働くジェリー(トム・クルーズ)はある日、お抱えのスター選手たちがスポンサーやチームとの高額な契約に振り回される言動と、その人間味が欠ける原因を作った自分の仕事自体に疑問を抱く。
「俺は最低だ」と思った夜、突如としてクライアントを減らして原点回帰することを促す提案書<誰もが考えていて口にしないこと〜この業界の未来>を書くことに取り憑かれる。スポーツ・エージェントの元祖的人物ディッキー・フォックスの言葉を思い出しながら。

この仕事の原点は、選手との人間関係だ。


しかし、“禁断の提案書”は当然のように失笑を買い、おまけにライバルからは屈辱のクビ勧告。自分の契約選手を次々と横取りされてしまう中、信じてくれたのは落ち目のわがままなアメフト選手(キューバ・グッディング・ジュニア)ただ一人。そして子育てに追われる経理部のドロシー(レネー・ゼルウィガー)だけだった。ここからジェリーの長い旅が始まっていく。

この作品の脚本/監督は、キャメロン・クロウ。若い頃にローリング・ストーン誌でロック・ジャーナリズムを書いていたキャリアを持つ映画作家。使われる曲がとにかく抜群なのは言うまでもない。

会社を解雇されてフリーになったジェリーが心機一転。
ドラフトを控える有望な大学選手の父親と固い約束を交わした帰り道。車の中でラジオから流れる曲を口ずさむシーンが秀逸だ。
こんな時はハイなローリング・ストーンズでもない。甘い歌声のカントリーでもない。この今の自分の心境を代弁してくれる曲。それが聴こえるまで局を切り替えていく。そしてトム・ペティの「Free Fallin’」がジェリーの新しい人生の賛歌となる。

そう、俺は自由!
フリー・フォーリン
そう、俺は自由なんだ!


物語はドロシーとの恋の行方や子供との交流、唯一の契約選手との友情などが絡み合いながら進んでいくのだが、クライマックスの「君が僕を完全にする」という愛の告白や、大復活を遂げたその選手がTVの生中継で放つ最後の一言に、この映画最大の感動が待っている。

また、先に挙げたディッキー・フォックスによる意味深な言葉が映画の所々で挿入されるのも、この映画『ザ・エージェント』の粋な部分だ。

パンチを喰らっても明日がある

愛がなければ、売り込みは成功しない

私は目覚めると手を叩いてこう言う「いい一日にするぞ!」

ここ(心)が空っぽなら、ここ(頭)に価値はない

こういう私も人生で数多くの失敗を重ねてきた。だが今では妻を愛し、人生を愛している。君にもそういう成功を!


新しい人生の賛歌「Free Fallin’」のシーン


『ザ・エージェント』


*日本公開時のチラシ
スクリーンショット(2014-06-26 0.23.09)
*このコラムは2014年7月2日に初回公開されました。

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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