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真夜中のカーボーイ〜激動の60年代と70年代をつなぐ1969年が生んだ傑作

2017.10.18

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都会と呼ばれる空間は、常に弱者を見つけようとする過酷な性格を併せ持つ。夜になると歪んだ正義や悪知恵も蔓延する。金さえあれば何でも許される風潮やセレブなムードを醸し出す虚飾は、よほどの強い信念と美学、あるいは都市生活慣れした免疫を持った人間でない限り、そのあまりの眩しさに簡単に誘惑されて堕ちてしまう。それは世界中の都会に言えることであり、東京も例外ではない。

『俺たちに明日はない』『卒業』『イージー・ライダー』『明日に向かって撃て!』などに続いたアメリカン・ニューシネマの『真夜中のカーボーイ』(Midnight Cowboy/1969)は、紛れもなく都会への憧憬と現実を描いた物語だった。

主演は共に舞台俳優出身のジョン・ボイトとダスティン・ホフマン。ジョンはこれが初主演作で、ダスティンは前作『卒業』とは打って変わった役作り。原作は1965年に出版されたジェームズ・レオ・ハーリヒーの小説で、監督はイギリス人のジョン・シュレシンジャー。映画は60年代最後のアカデミー作品賞受賞作となった。

物語は、テキサスの田舎町のレストランで皿洗いとして働く長身でハンサムで除隊したばかりの若者ジョーが、大都会ニューヨークを“約束の地”に定めて一旗上げるべく、新調したスーツやテンガロン・ハットやブーツに身を包んで意気揚々とバスに乗り込むところから始まる。道中、田舎町での辛い過去がジョーの脳裏を横切るが、それでもラジオの電波がNY局に変わると期待と希望に満たされるのだった。

都会には男を買う婦人がたくさんいる。テレビやラジオや雑誌で仕入れた三文記事を信じ込んで踊らされているだけのジョーは、次第に男娼や弱者には微笑んでくれないニューヨークの厳しい現実にあっけなく飲み込まれていく。文無しで安ホテルさえ追い出され、男らしいカウボーイを求める夜の男たちに身を売ることになる。

そんな時に出逢ったのが廃墟に暮らす浮浪者で、肺を病んだ片足が不自由なリコ。彼には太陽が輝くマイアミに行くというささやかな夢があった。パームツリーとココナッツの匂いに包まれて健康を回復したい。

やがて奇妙な友情で結ばれた二人は、最底辺の生活から抜け出そうとあらゆる手段を使って金を稼ごうとする。ヒップな人々が集まるパーティで初めて顧客を見つけたジョーは、リコを連れてマイアミ行きのバスに乗り込むのだが……。

オープニングシーンでは軽快なメロディに乗ったニルソンの「Everybody’s Talkin’」がアメリカン・ドリーム賛歌として流れているが、ジョーが都会の現実を知ったあたりからジョン・バリーの孤独感を滲ませたハーモニカ音楽が聴こえてくるのが印象的。『真夜中のカーボーイ』は、激動の60年代と70年代を繋ぐ極めて重要な1969年が生んだ名作だ。

映画のオープニング


映画のエンディング

『真夜中のカーボーイ』

『真夜中のカーボーイ』


*日本公開時チラシ
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評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
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