TAP the SONG

久世光彦が作った沢田研二主演のドラマから生まれた「時の過ぎゆくままに」

2016.02.05

Pocket
LINEで送る

1975年にオンエアされたテレビドラマのテーマとして作られた「時の過ぎゆくままに」は、大ヒットを記録して沢田研二の代表作になった。

時の過ぎゆくままに この身をまかせ
男と女が 漂いながら
堕ちてゆくのも しあわせだよと
二人つめたい 体あわせる


TBSの演出家でプロデューサーだった久世光彦が手がけたドラマ『悪魔のようなあいつ』は、沢田研二の魅力を最大限に引き立てるべく企画されたものだ。

当時の久世はテレビドラマのヒットメーカーとして知られていたが、グループ・サウンズのタイガースからソロになって成功し、時代の寵児として輝いていた沢田研二に惚れ込んでいた。

飛ぶ鳥を落とす勢いだった人気作詞家の阿久悠と二人で、久世は企画を考えてドラマを作ることにする。

生涯で作詞した曲が5000曲にものぼる阿久悠は、自分の作品で好きなものはとの質問に対して、当然ながら「答えを出すのはなかなか難しい」と語っている。
だが「時の過ぎゆくままに」だけは、「いつ、どんな場でも、どんな機嫌の時でも」あげる曲だと断言していた。

これは昭和50(1975)年の作品である。同年6月から17週、TBS系で放送された「悪魔のようなあいつ」の主題歌として作った。
ぼくが沢田研二のために書いた最初の詞でもある。
こういうドラマ発でない限り、沢田研二との縁も考え難かったので、もしもこの機会を失していたら、その後の膨大なヒット曲も出なかったかもしれない。
そう思うと得難いチャンスであった。


この企画は演出とプロデュースを担当した久世から、阿久悠のもとへ持ち込まれたものだった。
新しいドラマをやることになった久世は「企画に加わってよ」と、作詞だけでなく原作も阿久悠に依頼したのだ。

沢田研二のけだるさを秘めた退廃美に魅せられていた二人は「色っぽい歌を作りたいね」と意見は一致し、久世はまず「時の過ぎゆくままに」というタイトルを決めた。

カサブランカ
ハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマンが主演したハードボイルド映画、『カサブランカ』のテーマ曲だった「As time goes by(時が流れようとも)」からのいただきである。

あなたはすっかり 疲れてしまい
生きていることさえ 嫌だと泣いた
こわれたピアノで 想い出の歌
片手でひいては ため息ついた


この詞に対しては贅沢にも6人の作曲家によって、それぞれに曲をつけてもらった。
荒木一郎、井上大輔、井上尭之、大野克夫、加瀬邦彦、都倉俊一という、その頃のヒットメーカー6人がコンペティションで競い合い、その中から大野克夫の曲が選ばれた。

沢田研二が扮する可門良という悪魔のような少年は、時効の迫っていた東京府中市での3億円強奪事件の真犯人で、セントジョージ孤児院で育った孤児という設定だった。

可門良は藤竜也が演じる野々村が経営する「クラブ日蝕」で、淋しげに「時の過ぎゆくままに」を歌っているクラブ・シンガー。
そして野々村の稚児でありながらも、野々村の斡旋で一回10万円で体を売る男娼だ。

しかも末期の脳腫瘍に犯されいるため、時効を迎えずに死んでしまうかもしれないという恐怖を感じている。

悪魔のようなあいつ 沢田研二と
沢田研二の魅力の上に全てが成り立っているドラマの主人公を、久世光彦はこのように規定した。

「彼は刃物のように危険で、氷のように酷薄で鋭く、だからこそ甘美なロマンの国へ入れるライセンスを、たったひとり許されて持っている美しい青年である」


ドラマの原作は阿久悠、脚本は長谷川和彦、音楽は井上尭之・大野克夫、さらに漫画化では絵師の上村一夫を起用し、まさに久世人脈を総動員したかのような才能が集まって連続ドラマが始まった。

同性愛がテーマで、劇中にはベッドシーンやレイプもあり、テレビドラマとは思えない内容と演出は賛否両論で話題を集めたが、ヒットメーカーの久世光彦にしては視聴率的にはさほどの数字が得られない結果となった。

だが石油危機後に訪れた70年代なかばの空虚な時代を映し出して、一部の人たちから熱狂的に受け入れられてカルト的な注目作として語り継がれている。

そしてレコードの「時の過ぎゆくままに」は大ヒットし、それまでの沢田研二のシングルのなかで最高の売上げを記録した。

時の過ぎゆくままに 沢田研二
さらにはドラマの『悪魔のようなあいつ』と歌の「時の過ぎゆくままに」の世界が、視聴者のひとりだった文学少女を刺激し、作家の中島梓(またの名を栗本薫)が誕生することになる。

それが”やおい・BL小説”の始祖とされる中島梓の「真夜中の天使」(文藝春秋社刊)で、久世の美学や趣味が前面に出た『悪魔のようなあいつ』は、その後に大きく花が開いた”オタク少女文化”の発火装置の役割を果たしたのだった。


推理小説家としてデビューした中島梓は久世からの依頼で、1978年に沢田研二主演のドラマ『七人の刑事 特別編 悲しきチェイサー』の原案と脚本を書いた。
テーマ曲に使われたのは、沢田研二のソロ・デビュー作「君をのせて」だった。











Pocket
LINEで送る

スポンサーリンク

関連アーティスト

関連するコラム

[TAP the SONG]の最新コラム

このコラムへの感想・コメントを書く

Pagetop ↑