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E.YAZAWAの世界を確立する矢沢永吉を作詞で支えた西岡恭蔵 ③~「A DAY」

2018.11.30

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セカンド・アルバムのタイトル曲になった「A DAY」は、矢沢永吉のなかでも屈指のラブ・バラードだ。
この静謐な楽曲の完成度は尋常ではない。

矢沢はセルフ・プロデュースによるソロの二枚目で、早くもキャロル時代に終わりを告げて、「E.YAZAWA」の世界を完全に確立することに成功した。



アレンジも歌唱も素晴らしいから名曲になったのだが、作詞した西岡の役割もまた大きかった。
生きている人間の呼吸やぬくもり、そして胸に去来する思いや願いが、きわめて近い距離感で伝わってくる歌詞にはいっさいの無駄がない。
それを矢沢が歌うことで世界はさらに深みを増して、永遠や普遍をテーマにした究極のラブソングにも聴こえる。

「A DAY」
 作詞:西岡恭蔵 作曲:矢沢永吉

 くらい闇のはてに
 青い月の光
 浮かぶ君に 出逢うまで 
 永い時が過ぎた

 君の頬につたう
 過ぎた日の涙
 でも もうこれっきり
 すべて さよならさ

 Oh my love 二人きり
 見つめ合う
 Oh my sweet いつまでも
 月に抱かれて




自然に恵まれた三重県志摩半島に生まれ育った西岡恭蔵が、最初に出会った都会は大学があった大阪だった。
そして音楽を通じて知った仲間たちと活動をしていくうちに、当時の主流だったメッセージ性の強い関西フォークのスタイルではなく、アメリカ大陸やカリブ海に浮かぶ島から生まれた異文化が混じり合っている歌や音楽に惹かれていった。

1975年に発表したソロ・アルバムの3作目は、アメリカのカントリーやデキシーランド・ジャズなどの伝統的音楽への接近にとどまらず、アメリカ南部までルーツをさかのぼっていった細野晴臣の楽曲『ろっかばいまいべいびい』が、アルバムのタイトル曲になった。

鈴木茂とハックルバックのドラマーだった林敏明はバンドが解散した後に、西岡恭蔵とともに「カリブの嵐」というバンドを組んで活動していくが、「恭蔵さんはシンプルにそういう音楽が好きなんだろうなぁ」と思ったと当時を振り返っている。




『ろっかばいまいべいびい』はハックルバックをバックにしたファンキーなサウンドを中心としたA面と、細野晴臣の協力を得てアコースティックでレイドバックしたサウンドのB面という構成になっていた。
そして新しくできたオレンジレーベルの第一弾として、1975年7月に世に出た。

キャロル解散後はCBSソニーに移籍することを決めていた矢沢永吉と、秋にソロ・アルバムを発売する準備を進めていたディレクターの高久光雄が、作詞家としての西岡恭蔵に注目したのアルバム『ろっかばいまいべいびい』を聴いたからだろう。
そこに入っていた「踊り子ルイーズ」や「ファンキー・ドール」は、そのまま『アイ・ラブ・ユー、OK』の世界にも通じるところがあった。

そうした時間的な流れを確認した上で「A DAY」を聴いてみると、「ろっかばいまいべいびい」のアンサー・ソングの匂いがどこかしらに感じられる。

「ろっかばいまいべいびい」
 作詞・作曲:細野晴臣

 すてきな君 そのくちびる
 ろっかばいまいべいびい
 おかしな唄、このメロディ 
 ろっかばいまいべいびい
 泣かないでさ これからは 
 ダイナ、君といつも一緒だよ

 晴れた日はとても青い空 
 花は咲き乱れ
 そよ風に鳥はさえずり 
 夜は青い月を見つめ


「二人きり見つめ合う」距離は近すぎるほど近く、これからは「いつも一緒だよ」という幸福感に満ちている…。
しかも二人は「月に抱かれて」、「夜は青い月を見つめ」ている…。

西岡は歌詞を書く時に、どうすれば矢沢が持っているオーラや男の色気が引き出せるのか、そこを意識して取り組んでいたという。
そして「ろっかばいまいべいびい」のテーマだった「泣かないでさ これからは ダイナ、君といつも一緒だよ」を受けて、それを月の光と組み合わせることによって「A DAY」に結実させていった。

月の光に照らされているような穏やかな幸福感、もう一緒だから泣かなくてもいいという安心感、それらが両立していながらも叙情的かつセンチメンタルで、しかもクールな名曲がこのようにして誕生したのだ。


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