1972年(昭和47年)5月21日、ポール・サイモンのソロ名義2ndシングル「ぼくとフリオと校庭で」(CBS・ソニー)が日本で発売された。
同年の国内ヒットソングといえば…
1位「女のみち」/宮史郎とぴんからトリオ
2位「瀬戸の花嫁」/小柳ルミ子
3位「さよならをするために」/ビリーバンバン
札幌冬季オリンピック、ミュンヘンオリンピックが開催され、自動車に初心者マーク登場、東北自動車道が開通、そして連合赤軍によるあさま山荘事件がおこった年でもある。
同曲のレコーディングでは、ジョン・レノンやポール・マッカートニーなどの作品への参加で知られるデヴィッド・スピノ(ギター)や、マイルス・デイヴィスのアルバムへの参加でその名を知らしめたブラジル出身のパーカッショニスト、アイアート・モレイラ等がバックを務めている。
アメリカのポップスでは聴き慣れないパーカッションの音は、“クイーカ”というブラジルの打楽器によるもの。
リリース以降は、コンサートでは必ず演奏されており、ポール自身も気に入っている楽曲として多くのファンに愛され続けている。
本人の思い入れもあってか、この曲のミュージックビデオはリリースから16年も経った1988年に撮影・制作されている。
歌詞の内容が謎めいていて、発表当時からファンの間であれこれ真相が推測されている“迷曲”でもある。
ママはパジャマのままベッドから飛び出した
そして警察署に駆けつけたんだ
ママが目にしたこと
それは法律に反することだった
ママは顔を下に向けると地面に唾を吐きつけた
1972年7月20日、あるインタヴュアーがポールに歌詞の意味を尋ねた。
「ママが見たものって一体何だったんですか? 世界中のファンが知りたがっています。」
「それが何なのかなんてはっきりとは言えないけれど…何か性的なものかもしれないね。僕がその“何か”を答えたとしても、みんなの理解をわざわざ妨げるつもりはないよ。どんな風に解釈してもらってもいいことだから。」
『ティファニーで朝食を』で知られるユダヤ系作家トルーマン・カポーティは、この曲に関してこのような解釈を主張していたという。
「ポール自身も具体的にはどのような犯罪行為かわからないとインタヴューなどで言っているので、それは彼の無意識レベルの表れかもしれない。」
「サイモン&ガーファンクルとしての活動を休止した後、ソロ活動に踏み切ったポールの偽らざる素直な心境が出ているのではないか?」
ということで…ぼくは一人でやっているよ
自分がどこに向かっているのか
ぼくにはわからないけど うん…ぼくらしくやってるよ
ブラブラと自分の時間はたっぷりあって
だけど…ぼくにはどこに行ったらいいかわからない
1983年には、日本で同じタイトルが着いた漫画が登場した。
ちょっとホラーテイストもある不思議な漫画作品で、謂わば“少年の日のトワイライトゾーン”のような内容となっている。
作者の諸星大二郎は70年代に手塚賞を受賞して週刊少年ジャンプでデビューしたSF・伝奇漫画家である。
漫画『ぼくとフリオと校庭で』は、白泉社の少年ジェッツに1983年初出掲載され、1991年には双葉社発行のコミックス単行本化され、諸星大二郎短編集「僕とフリオと校庭で」にも収録されている。
また2003年には、山崎まさよしが同曲の邦題タイトルをもじった楽曲「僕と不良と校庭で」(ユニバーサルミュージック)をリリースし、日本テレコムのキャンペーンソングに起用されている。
【佐々木モトアキ プロフィール】
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【TAP the POP佐々木モトアキ執筆記事】
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