歴史あるジャズの老舗「新宿PITINN」では2014年12月26日から29日まで、大友良英の4デイズ6連続公演が行われた。
最終日を飾ったのは16人のメンバーからなる大友良英スペシャルビッグバンド、「新宿PITINN」50周年を記念して発売されるCDのライブ・レコーディングが行われた。
その夜はオリジナル曲のほかに、半世紀前に早世したモダンジャズの巨人エリック・ドルフィーの楽曲の数々、同時代の表現者であるジム・オルークの「ユリイカ(Eureka)」なども演奏された。
大友良英(G)江藤直子(P)近藤達郎(Key)斉藤 寛(Fl)井上梨江(Cl)鈴木広志(Sax)江川良子(Sax)東 涼太(Sax)佐藤秀徳(Tp)今込 治(Tb)木村仁哉(Tuba)大口俊輔(Acc)かわいしのぶ(B)小林武文(Ds)上原なな江(Per)相川 瞳(Per)Sachiko M(sinewaves)
1959年に横浜で生まれた大友良英は福島市で10代を過ごした後に上京、ギタリスト、ターンテーブル奏者として即興演奏やノイズ・ミュージック、ジャズなど多様な音楽を発表している。
世の中で普通に流通してる音楽とはかなり異なる、特殊な音楽をやっていると本人は自覚していたそうだ。だが、その一方では人間が普通に考えたなら、こういう音楽にしかならないだろうとも思っていたという。
1990年代からは日本よりも先に世界のノイズ・ミュージック、フリー・ジャズ、映画音楽などの分野で認められた。
その後、日本でもテレビのドラマやドキュメンタリー、映画音楽を数多く手掛けて、作曲家及びプロデューサーとして活躍しているが、一般にまで広く知られるきっかけはNHKの朝ドラ「あまちゃん」だった。
東日本大震災の後は、福島の現在と未来を世界に発信するため、ロック・ミュージシャンの遠藤ミチロウや詩人の和合亮一などと「プロジェト FUKUSHIMA!」を立ち上げた。
そもそも学校で教わる音楽の時間がトラウマ的に嫌いだったという大友良英が、どうして音楽を職業にするようになり、演奏者や作曲家として活動の場を広げて、「学校で教えてくれない音楽」という一冊の本を出すまでになったのか。
きっかけは音楽のワークショップに参加していた名古屋の中学生から、「僕らの学校で音楽の授業をやってくれませんか」という依頼を受けたことだった。
大友良英は障害をもつ人たちとのワークショップや、「プロジェト FUKUSHIMA!」に代表されるような一般参加型の音楽プロジェクトを各地で開催するなかで、さまざまな音楽のあり方に出会っては試行錯誤してきた。
そうした経験のなかから、音楽が生まれてくる瞬間だけでなく、生きている音楽が生まれる場が作られていく過程が、最も大切なのではないかと考えるようになった。
学校の音楽の授業で教わる場合、日本ではまず「ドレミファソラシド」から始まる。だが、それらは音楽のほんの一部に過ぎないと、大友良英は「音痴はない!」というところから授業を始めていく。
楽器の演奏技術や、歌った時に「ドレミファ」という音程が上手くとれるかどうかといったことが重要なのではなく、そうではないところにこそ音楽の本当の面白さがあるのだと、具体的に音を出しながら授業を進めていく。
授業の模様やワークショップのことを文章で読みながら、それらが行われたYouTubeの動画を見ると、音楽には演奏者や歌い手、聴き手、踊り手が共有する喜びがあるのだということが伝わってくる。
この授業に参加したパーカッショニストのタケオこと新倉壮朗にはダウン症の障害があるが、アフリカの楽器サバール、ジャンベ、バラフォンのほか、ピアノやマリンバの即興演奏、即興ダンスが大の得意だ。
タケオが初対面で即興演奏した時の、大友良英の言葉を紹介したい。
音が「音楽になる」ためには、技術的な理由よりも、音楽が生まれる「場」をつくることのほうが重要だと思っているんです。その場にいる人たちが、自分たちの今持っている力で音楽を作り出していくような方法です。その「場」みたいなもんが成立すれば、音はおのずと生き生きし出す・・・・・そんな感じがしています。
「音楽の根っこにある一番大事なもの」を感じた瞬間、人は音を、声を、思いを、心で受けとめられるようになる。
「音楽の根っこにある一番大事なもの」を知った瞬間、人は音を、声を、思いを、表に出せるようになっていく。
芸術も芸能も関係なく、プロもアマチュアも関係なく、表現者は誰もが心に熱い思いを持っている。それをどのようにして形にすればいいのかと、もがきながら、迷いながら、手探りで進んでいく。

大友良英スペシャルビッグバンド
『ええじゃないか音頭』
(2014/ビクターエンタテインメント)
連続テレビ小説『あまちゃん』より空前のヒットを記録した「あまちゃん オープニングテーマ」を音頭化した「あまちゃん音頭」、二階堂和美をボーカルに迎えた「地元に帰ろう音頭」、「プロジェクトFUKUSHIMA!」から生まれた「ええじゃないか音頭」(唄:遠藤ミチロウ、長見順)、そして福島県在住の遠藤知絵さんが歌う「新生相馬盆唄」など全6音頭を収録。振付けには「アセロラ体操」などを手がけた「珍しいキノコ舞踊団」や、ラッキー池田、「潮騒のメモリー」「地元に帰ろう」の作曲者でもあるSachiko Mなどが参加。町内会のお祭りに運動会、海に山に、この1枚があればどこでも盆踊り!

TAP the POP協力・スペシャルイベントのご案内
【オトナの歌謡曲ソングブックコンサート in YOKOHAMA】開催

1917年に開館した横浜の歴史的建造物「横浜市開港記念会館」(ジャックの塔)で、昭和の名曲を愛する一流のアーティストが集ってコンサートを開催!
昭和に憧れる若い人からリアルタイムで昭和歌謡に慣れ親しんだ人まで、幅広い世代が一緒に楽しめるコンサートです! “国の重要文化財”という、いつもと違う空間が醸し出す特別なひとときを、感動と共にお過ごしください!!
▼日時/2025年6月7日(土曜) 開場17時/開演18時
▼場所/横浜市開港記念会館講堂(ジャックの塔)
▼出演
浜田真理子 with Marino(サックス)
畠山美由紀 with 高木大丈夫(ギター)
奇妙礼太郎 with 近藤康平(ライブペインティング)
タブレット純(司会と歌)
佐藤利明(司会と構成)
▼「チケットぴあ」にて4月5日(土曜)午前10時より販売開始 *先着順・なくなり次第終了
SS席 9,500円 (1・2階最前列)
S席 8,000円
A席 6,500円
「チケットぴあ」販売ページはこちらから
▼詳しい情報は公式サイトで
「オトナの歌謡曲ソングブックコンサート in YOKOHAMA」公式ページ