1985年のロック・イン・リオから6年の月日を経て開催されたロック・イン・リオ2。
1月18日から27日まで9日間にわたって開催され、プリンスやジョージ・マイケル、サンタナ、ジョー・コッカー、インエクセスといったスター達が顔を揃えた。
その豪華な顔ぶれに混じり、20日と23日にヘッドライナーとして出演したのがガンズ・アンド・ローゼスだ。
バンドが結成したのは1985年。
ボーカルを探していたL.A.ガンズのもとにハリウッド・ローズのアクセル・ローズとイジー・ストラドリンが加わったことから、バンド名はガンズ・アンド・ローゼスとなった。
ところが、間もなくしてトレイシー・ガンズらL.A.ガンズのメンバー3人が脱退してしまう。
その穴を埋める形で加入したのがギターのスラッシュ、ベースのダフ・マッケイガン、ドラムのスティーヴン・アドラーだった。
ガンズ・アンド・ローゼスは1987年、1stアルバム『アペタイト・フォー・ディストラクション』でデビューを果たすも、リリース当初はまったくといっていいほど売れなかった。
しかしシングル・カットされた「スウィート・チャイルド・オブ・マイン」がラジオやMTVを通じて大ヒット、全米1位という快挙を達成する。
すると「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」など他の曲にも火がつき、『アペタイト・フォー・ディストラクション』はリリースからおよそ1年を経てついに全米1位を獲得、爆発的なヒットを記録するのだった。
ロック・イン・リオ2への出演依頼の話が舞い込んだのは、それからおよそ2年後のことだ。
この頃ガンズは、脱退したスティーヴンの代わりにドラマーのマット・ソーラムを、そして新たにキーボードのディジー・リードを加え、世界が待望する2ndアルバム『ユーズ・ユア・イリュージョン I&Ⅱ』を制作している最中だった。
1月20日、会場となるマラカナン・スタジアムはおよそ14万人の大観衆で埋め尽くされていた。
ところが、驚くべきことにこの時点で彼らは6人全員が集まって演奏したことがなかった。
ダグによれば、その原因はアクセルがリハーサルに来なかったからという。
「マットとディジーはアクセルがバンドで歌うのを見たことすらなかったんだ。
しかもリオでは曲順すら決まってなくて、あるのは選曲したリストだけだった」
6人揃って演奏したことがないどころかセットリストまでないという、傍から見れば明らかに準備不足だった。
しかしガンズ・アンド・ローゼスはそんな不安をいとも簡単に払拭する。
2ndアルバムに収録予定の新曲「プリティ・タイド・アップ」で幕を開けると、知らない曲であるにも関わらず熱狂的な歓声が上がった。
4曲目では「愛のテーマ(ゴッド・ファーザー)」で観客を驚かせると、そのまま新曲の「ダブル・トーキング・ジャイヴ」へと流れ、ギターソロの途中でアクセルが叫ぶ。
「お前らどこにいるか分かってるか!?
ジャングルにいるんだぜ!」
アクセルのシャウトによってボルテージは最高潮に達し、大ヒット曲の「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」が始まる。
セットリストがないとは思えないほどの怒涛の展開だ。
初めてアクセルが歌うのを見たマットはその圧倒的なシャウトに驚かされ、スラッシュは6人揃って初めて演奏したことに喜びを感じたという。イジーは後にロック・イン・リオについてガンズ時代での最高の思い出だと振り返っている。
この日のステージはもちろんのこと、23日の出演も含めてロック・イン・リオでのガンズ・アンド・ローゼスのパフォーマンスはこの上ない大成功を収めた。
何が起きるか分からない生の緊張感がライブの醍醐味の1つであるとしたら、ロック・イン・リオ2でのガンズ・アンド・ローゼスは、まさにその魅力を凝縮したようなパフォーマンスといえる。
参考サイト:Suicide Shift – unofficial Guns N’ Roses fan site