♪「Redemption Song」/ジョニー・キャッシュ&ジョー・ストラマー
【ジョー・ストラマー命日・トリビュートコラム】
2002年4月、ジョニー・キャッシュはロサンゼルスにあるリック・ルービンの自宅スタジオにいた。
プロデューサーのリックは、のちにジョー・ストラマーの遺作となったアルバム『Streetcore』に収録された「Redemption Song」と「Long Shadow」(ジョーがジョニーに奉げた歌)の2曲をそこで録音した。
かつてボブ・ディランがそうだったように、ジョニー・キャッシュの前では「パンクのカリスマ」と言われたジョー・ストラマーも、無邪気な子供のようだった。
リックもまた、目を輝かしながら当時のレコーディングを振り返って貴重なエピソードを語っている。
「ジョーは、ジョニーが録音している時はいつもやって来て、スタジオの周りをウロウロしていて楽しそうだった。まるでここに最高のビリヤード台を見つけたかのようにね。」
「俺がいない時、ジョーはフェンスを登り越えて入ってきて、俺が帰宅するとちゃっかりそこに居るんだよ!俺たちは床に横になり、隣の部屋で歌っているジョニーをガラス窓越しによく覗きこんだんだ。」
「ジョーはエキサイトしていたけど、今まで見た中で一番物静かだった。学校にいる生徒みたいにね。」
それはジョニー・キャッシュとジョー・ストラマーという世代を超えた反逆のカリスマの奇跡的な出会いだった。
リックの勧めでレコーディングセッションをする事になった二人は、
1980年にボブ・マーレィが発表した「Redemption Song」(救いの歌)を選んだ。
「このセッションを通じて、ジョニーとジョーは瞬く間に友達になったんだよ」
とリックは当時を振り返る。
彼等がこの世を去る直前に“贖罪”の意味を含む「救いの歌」を歌い遺した事にどんな意味があったのか?
十年後…二十年後の世界を生きる僕らは、この歌声から何かを感じとらなければならない。
彼等がそうであったように“行動”しなければならない。
そして、明日への希望を繋いでいかなければならない。
囚われた精神から自らを解き放とう
俺達の心を解放できるのは俺達しかいない
何も出来ずに傍観している間に
どれだけ予言者は殺されるのか?
一緒に歌ってくれないか? この自由の歌を
『Unearthed』/ジョニー・キャッシュ(2003/American Recordings)
(二人の歌声「Redemption Song」が収録されたジョニーのBOXセット・アルバム)
2002年12月22日、ジョーは天国へと旅立った。
先天性の心臓疾患による心臓発作だった。享年50。
「ジョーは素晴らしく良い奴で、優れたミュージシャンだった。」
70歳を迎えたアメリカを代表する反逆のロッカーは、イギリスから来たパンクロッカーの訃報を受けてMOJO誌に短くコメントを残した。
そして翌2003年9月12日、ジョニーも旅立った。
糖尿病の合併症による呼吸不全だった。享年71。
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