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切り裂くサウンドと詞の世界~リーガルリリー「私は私の世界の実験台」

2020.02.17

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“ブルーハーツのような青い衝動にイースタンユースばりのエッジの効いたサウンド”という例えは、いささか強引に過ぎるかもしれないが、初めてリーガルリリーの音楽を聴いた筆者の印象は、まさにこんな衝撃だった。

2014年に高校生だった、ヴォーカル&ギターのたかはしほのかと、ドラムスのゆきやまが出会って結成されたリーガルリリー。さらにベースの白石はるかが加入し、ガールズ・スリーピース・バンドとして、2016年に1stミニ・アルバム『The Post』をインディーズ・レーベルよりリリースする。

当時まだ10代のヒリヒリするような思春期の、壊れそうな儚さと同時に鋭く切り裂くような破壊性を持った歌詞が、迫力ある轟音サウンドに乗せて歌われる。
中でも「リッケンバッカー」は、鮮烈な歌詞が印象的で今でもファンに強く愛される1曲だ。

「リッケンバッカー」(2016)


翌2017年に2ndミニ・アルバム『The Radio』、2018年には3rdミニ・アルバム『The Telephone』をリリース。しかし2017年には白石はるかが脱退し一時二人体制となるが、2018年のアルバムリリース後にベースの海が加入し、再びスリー・ピース・バンドとなる。
2019年にはアメリカで開催された「SXSW 2019」に出演、中国やアジアでもライブ・コンサートを開催するなど、海外にも活動の幅を広げている。

そして、バンド結成6年目となる2020年2月5日に、満を持してのフル・アルバム『bedtime story』をリリースした。



全ての曲のソングライティングを手がけるたかはしほのかは、ニルヴァーナなどのグランジ・ロックや、オルタナティヴ、プログレッシブ、ポスト・ロックなどからの影響が大きく、また、パワードラムが印象的なゆきやまは、レッド・ツェッペリンのジョン・ボーナムに強い衝撃を受けたという。

また、たかはしが紡ぎ出す言葉は時に抽象的でありながら、心を突き刺すようなストレートな鋭さも併せ持つ。歌詞をどのように作り出すのかについて、Rolling Stone Japan のインタビューで語っている。

考えながら組み立てていくのではなくて、自分の心の一番上にある感情をそのまま貼り付けていくというか。最初に絵を思い浮かべて、それについて湧き出る感情をうわーって書いていくだけなので、それで抽象的になっちゃうのかなと思っています。言葉どうしの辻褄を合わせようとはせず、聴き手の解釈に任せている部分が多いんですよね。


また、歌詞の中に「飛び交った戦闘機」や「爆心地」「催涙弾」など、戦争を想起させるような表現が度々使われるのは、たかはしが生まれ育った場所が福生であることも少なからず関係しているようだ。また、母親が図書館のボランティアで絵本の読み聞かせをしていて、彼女が幼い頃、母親に読んでもらった戦争の絵本が、お化けの絵本よりも、悲しくて怖いという感情を強く揺さぶられ、それが今でもずっと心に残っていることも理由の1つにあるようだ。
しかし、大切な人がそのような怖い場所へ向かわないでほしいという強い願いが、歌詞には込められているのだ。

たかはしが「自分の生まれた年の歌を作りたい」と思って生まれた楽曲「1997」は、「私は私の世界の実験台」というフレーズがとても印象的だ。「自分の人生は自分で決めるしかない」と思った時の彼女自身の気持ちから生まれた言葉だが、同時に「自由にやればいい」というポジティブな覚悟と勇気を、同世代のみならず幅広い世代にも感じさせてくれる言葉ではないだろうか。

「1997」(2020)


たかはしほのかの声について、一度聴いただけでは、ふわっと柔らかな印象かもしれない。
しかしその透明感の中には、ロックンロールと芯の強さが感じられる。
心を切り裂くような強いサウンドと詞の世界、リーガルリリーは今要注目のバンドだと言える。


「GOLD TRAIN」(2019)

「ハナヒカリ」(2019)

Apple MusicとSpotifyでは「10 songs selected by リーガルリリー」を7回に分けて公開しているが、彼女達のバックグラウンドも垣間見えて興味深い。regallily_playlist


リーガルリリーオフィシャルサイトhttp://www.office-augusta.com/regallily/



参考文献及び引用元:Rolling Stone Japan インタビュー~リーガルリリー、言葉とメロディが生み出す「魔法」の秘密
https://rollingstonejapan.com/articles/detail/33060/1/1/1


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