ファンキーなリズムに乗った、キラキラなポップ・ソング、「ABC」。
ご存知、モータウンより1970年にリリースされた、ジャクソン5の代表曲です。
ジャクソン5といえば、可愛らしい子供たちが大人の曲を歌うグループ。
当時、定着していたそのイメージを払拭するべく、ザ・コーポレーション(モータウンがジャクソン5の為に組んだ作曲家チーム)が作曲しました。
確かにこんな曲を聴いてしまえば、天真爛漫で愛くるしい魅力にコロッとやられてしまうことでしょう。
まさに、大人と「大人が望む子供らしさ」を理解する子供が作り上げた名曲です。
数多のグループ、ミュージシャンに影響を与え、またカバーされてきた「ABC」。
最近、この「ABC」へのリスペクトを彷彿とさせる素晴らしいパーティ・ナンバーを発見しました。
彼らを紹介したいと思います。
Lawrence/Me And You
本家のような可愛らしい魅力はありませんが、その代わり、大人らしくセンチメンタルな情緒が感じられます。
彼らの名前はローレンス。
現在22歳のクライド、19歳のグレイシーという二人のローレンス兄妹が中心となって活動しているソウル・グループです。
クライド(1994年生まれ)とグレイシー(1997年生まれ)はニューヨーク出身。
祖父、祖母の影響で、幼少期から作曲し歌を歌い始めたという彼ら。
幼くしてロウアー・マンハッタン(マンハッタン最南端)のクラブやカフェでパフォーマンスを披露していました。
音楽活動面でリードするのは長男のクライド。
彼は家族の影響により、スティーヴィー・ワンダーやジャクソン5など、モータウン音楽に深く影響を受けています。
6歳の頃に書いた曲が、当時(2000年)公開された映画『デンジャラス・ビューティー』の劇中歌として採用されました。
このことで彼は、アメリカのソングライター・ギルドより最年少メンバーとして認定されています。
彼はその後も『ラブソングが出来るまで』(2007年)、『Re:LIFE~リライフ~』(2014年)などに楽曲を提供しており、グループとは別に映画音楽の作曲家として活躍中です。
一方、グレイシーは女優として活動しており、ブロードウェイにてニール・サイモンの「ブライトン・ビーチ回顧録」に出演した他、いくつかのアメリカのテレビドラマにも参加しています。
グループが作られたのは、クライドが大学在籍中(2012年頃)のこと。
そこで兄妹二人のヴォーカルを中心とした、ホーン・セクションとキーボードを含む8人編成の大所帯グループが誕生しました。
クライドは、既に映画音楽界で名前を売っていた為、2013年にソロとしてデビュー・アルバムを発表。(このアルバムにはファウンテインズ・オブ・ウェインのアダム・シュレンジャーがプロデュースで関与)
そして満を持して、2016年。グループのデビュー・アルバム『Breakfast』が完成します。
しかもプロデューサーはニューヨークの顔役にして、70年代ソウルの最高の理解者、エリック・クラズノが担当。
Lawrence/ Do You Wanna Do Nothing With Me (Live Session)
こちらは寝間着姿でのライブ・セッション。
スティーヴィー・ワンダーを彷彿とさせる、爽やかなポップ・チューンです。
彼らの魅力は兄妹による強力なヴォーカル、華やかなバンド・サウンド。
そしてクライドによる70年代ソウルをベースとした多彩なソングライティング。
映像を想起させるドラマティックなアレンジも特徴です。
こちらで紹介した楽曲以外にも泣きのディープ・ソウル「Play Around」、グレイシーのパワフルな声量を生かしたゴスペル調ロックンロール・ナンバー「Shot」など素晴らしい曲が全12曲。
これがまだ「Breakfast」とは嬉しい驚き。
21世紀のソウル・シーンに現れた新星、ローレンスから目が離せません。
Lawrence/Alibi
(文/旧一呉太良)